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卒業式式辞

2007(平成19)年度卒業式学長式辞

 地球温暖化を実感した冬も終わり、皆さんがいよいよ学び舎から巣立つ今日の佳き日に多数のご来賓ならびに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成20年度松山大学・大学院学位記・卒業証書・学位記授与式を盛大に挙行できますことは、本学の光栄とするところであり、教職員を代表して心から御礼申し上げます。
 修了生および卒業生の皆さん、ご修了・ご卒業おめでとうございます。所定の課程を修めて、皆さんが本日こうしてご修了、ご卒業の日を迎えられたことに対して心からお慶び申し上げます。また、保護者の皆様におかれましても、これまでの日々を振り返ると感慨無量であり、さぞかしご安堵なされているものと拝察し、心からお慶び申し上げます。
 さて、修了生および卒業生の皆さん、皆さんが入学した折にも説明されたはずですが、今日の卒業式においても松山大学の歴史と教学理念としての校訓「三実主義」について述べておきます。これは、本学出身者として誇りを持ち、さらに教学理念を生かして実社会において活躍していただきたいと願って行っているのです。本日もこの二点について、先ず、お話しておきたいと思います。
 松山大学は大正12年〔1923年〕に開校した旧学制による松山高等商業学校がその始まりです。本校は、松山市出身で、日本初の工業用革ベルトの開発を遂げて製革業において成功し、大阪産業界の雄となり、世間からは「東洋の製革王」と呼ばれ、また、司馬遼太郎著「坂の上の雲」に登場する秋山好古と親交のあった新田長次郎〔雅号温山〕、当時の松山市長であり、俳人正岡子規の叔父に当たる加藤恒忠〔雅号拓川〕、教育家であり、山口高等中学校長、大阪高等商業学校長、北予中学〔現県立松山北高等学校〕校長になられた加藤彰廉らの協力によって設立されました。長次郎翁は、高等商業学校設立の提案に賛同し、学校の運営には自らは関わらないことを条件に、設立資金として巨額の私財を投じて松山高等商業学校を創設しました。温山翁は製革業やその関連事業の成功を自分だけのものにするのではなく、教育や文化の発展のために還元され、広く社会貢献をされました。現在、文京町キャンパス内に、感謝の意を込めて三恩人としてそれぞれの胸像を設置しています。
 昭和19年に松山経済専門学校と改称し、第二次世界大戦後の学制改革により昭和24年に商経学部[現、経済学部、経営学部]を開設して松山商科大学となり、その後、大学院経済学研究科、人文学部、大学院経営学研究科、法学部を順次開設して文系総合大学となり、平成元年〔1989年〕に校名を変更して松山大学となりました。平成18年に五番目の学部である理系の薬学部と三番目の大学院である大学院社会学研究科を開設して、本学は名実共に総合大学となりました。さらに平成19年には、四番目の大学院である大学院言語コミュニケーション研究科英語コミュニケーション専攻を開設して、教育研究体制をさらに充実しています。
 松山大学の教学理念は、初代校長加藤彰廉が提唱し、第三代校長田中忠夫によってその意義が確立された「真実」「忠実」「実用」の三つの実を持った校訓「三実主義」です。真実とは「真理に対するまことである。皮相な現象に惑溺しないで進んでその奥に真理を探り、枯死した既成知識に安住しないでたゆまず自ら真知を求める態度である。」と、忠実とは、「人に対するまことである。人のために図っては己を虚うし、人と交わりを結んでは終生操を変えず自分の言行に対してはどこまでも責任をとらんとする態度である。」と、実用とは「用に対するまことである。真理を真理のままに終わらせないで、必ずこれを生活の中に生かし社会に奉仕する積極進取の実践的態度である。」と説明されています。咀嚼すれば、三実主義とは、教育研究においては真理を探究することはもちろんのこと、その真理を日々の生活や仕事の中に応用できるものにすること、また、組織において能力を発揮するためには信用・信頼される人格にならなければならないことを説いていると考えます。
 この校訓「三実主義」は、特に現状のように大不況に見舞われ、先が見通せずに不安になっている時こそ重視されるべき教訓であると考えます。
 皆さんを社会に送り出すに当たりまず期待することは、この校訓「三実主義」をわが身に体して、信用・信頼を大切にして実社会で活躍していただきたいということです。本年は、創立87年目になりますが、この間に社会に送り出した卒業生は約六万三千人に達し、産業界を中心に教育界や官公庁などにあって、全国的に活躍し、高い評価を得てきました。これも卒業生の皆さんが、校訓「三実主義」を体して活躍した結果であり、これが松山大学の伝統になっていると確信しています。皆さんも伝統を守り、先輩たちに続いてご活躍ください。
 近年においては景気も回復し、団塊世代の大量退職の影響もあって、就職状況は売り手市場となっていました。しかし、現在では一転して大不況に陥り、就職難の時代に逆戻りしてしまいました。幸いにも皆さんの就職活動中は状況が良く、リーマンショックを引き金として生じた世界同時的金融危機、経済危機の影響はまだなく、就職の内定が得られたことと思います。元来、景気には循環があり、好況不況を繰り返します。思い起こせば、バブル崩壊・不況への突入も突然に訪れましたし、今回の不況も突然訪れた感があります。バブル崩壊後の不況も長年続きましたから、今回の不況もしばらく続くものと覚悟して、不屈の精神で困難を乗り越えてください。
 皆さんに対してもう一つ期待することは、学び舎から巣立ち、新たな旅立ちに際して、大志を抱き、それをどんなことがあろうとも成し遂げようとする強い意志をもって、粘り強く努力していただきたいということです。「意志あるところに道あり」の精神で前向きに頑張ってください。温山翁は16歳の時に福沢諭吉の「学問のすすめ」を読んで感動し、20歳で大志を抱いて温泉郡山西村(現松山市山西町)から大阪に出て、洋式製革技術を習得して、27歳で独立し成功したのです。温山翁の精神を継承し、大志を抱き目標に向かって努力していただきたいのです。
 皆さんご承知の通り少子化の影響は大きく、全国的に見ても私立大学の約半数が定員割れの状況になっています。今回の金融危機によって引き起こされた大不況によって進学が困難になり、状況がさらに深刻化して、ますます大学間競争は厳しくなることでしょう。このような状況にあっても、環境の変化に適応し、校訓「三実主義」に基づいて教育研究に励めば、社会から信用・信頼され、西日本有数の私立大学として持続的に発展できるものと確信します。後輩たちは、卒業生の実社会における活躍を見て自分自身の将来を思い描いて松山大学に入学してくるのですから、皆さんが実社会で活躍していただくことが大学への最大の支援になります。卒業生・修了生によって組織される「温山会」は、北は北海道から南は九州まで全国的に組織され、活発に活動しています。皆さんも温山会の一員になりますから、就職先の地域にある温山会支部総会に出席して親睦を深めてください。今後も温山会活動を通じて皆さんと協力関係が築けることを期待しております。
 最後になりましたが、皆さんが今後も益々ご健勝でご活躍いただき、地域・社会のために、さらには世界のために貢献できることを祈念して式辞といたします。

2009(平成21)年3月19日 松山大学学長 森本 三義


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