2012(平成24)年度松山大学卒業式学長式辞
創立90周年を迎える記念すべき年に修了・卒業される皆さん、ご修了・ご卒業おめでとうございます。所定の課程を修めて、本日このようにめでたくご修了・ご卒業の日を迎えられたことに対して、心からお慶び申し上げます。また、これまで成長を見守ってこられた保護者の皆様におかれましても、心からお慶び申し上げます。本日、多数のご来賓ならびに保護者の皆様のご臨席を賜り、平成24年度松山大学・大学院学位記、卒業証書・学位記授与式を盛大に挙行できますことは、本学の光栄とするところであり、教職員を代表して心から御礼申し上げます。
本日は、晴れて本学を巣立っていかれる皆さんに、松山大学の歴史と教育理念としての校訓「三実」の精神の二点について、お話をさせていただきたいと思います。
松山大学は、大正12年[1923年]に創立された旧制松山高等商業学校がその始まりです。松山高等商業学校創設に当たっては、新田長次郎[雅号温山]、加藤恒忠[雅号拓川]および加藤彰廉の協力があり、この方々は皆さんご存知の通り「三恩人」と呼ばれています。教育家であり、山口高等中学教諭、大阪高等商業学校長を歴任された後、北予中学[現県立松山北高等学校]校長となった加藤彰廉は、当時の松山市長であった加藤恒忠に、この松山の地へ高等商業学校の設立を提案しました。この提案に加藤恒忠は理解を示し、友人である新田長次郎に高等商業学校を設立するための資金の支援を依頼されました。そして、松山市出身で、当時、日本初の工業用革ベルトの開発を遂げて製革業において成功し、世間からは「東洋の製革王」と呼ばれていた新田長次郎は、高等商業学校設立の提案に賛同し、「学校運営に関わらないこと」を条件に、設立資金として巨額の私財を投じ、わが国の私立高等商業学校としては三番目となる松山高等商業学校を創設されました。その後、本学は、松山経済専門学校、松山商科大学を経て、平成元年に松山大学と改称し、90年を経た現在では5学部6学科に4研究科を擁する総合大学にまで発展してきています。
松山大学は、教育理念として「真実」、「実用」および「忠実」の三つの「実」からなる校訓「三実」を掲げてきました。松山高等商業学校の初代校長となった加藤彰廉が創唱した校訓「三実」の精神は、第三代校長田中忠夫によって、まず、真実とは「真理に対するまことである。皮相な現象に惑溺しないで進んでその奥に真理を探り、枯死した既成概念に安住しないでたゆまず自ら真知を求める態度である」、次に、実用とは「用に対するまことである。真理を真理のままに終わらせないで、必ずこれを生活の中に生かし社会に奉仕する積極進取の実践的態度である」、そして、忠実とは「人に対するまことである。人のために図っては己を虚うし、人と交わりを結んでは終生操を変えず自分の言行に対してはどこまでも責任をとらんとする態度である」と説明されています。
「三実」を現代風に解釈すると、「真実」および「実用」は学びの態度、「忠実」は人としてのあり方を示しています。「真実」とは、既存の「知」に満足することなく、真理を求めるために自ら学び、究め続けようとする態度です。「実用」とは、「知」を単に知識として学ぶだけでなく、自らの生活や仕事の中に活かすべく、常に現実的な問題を念頭に置きながら学ぶ態度です。「忠実」とは、人間関係や社会において、他者と誠実に向き合い、倫理的な態度はもとより、積極的に人と交わり、自らを謙虚に、そして互いの意見を尊重し共有しようとする態度です。校訓「三実」は、本学の大学院生・学生が拠り所とすべき教訓ではありますが、人生を生きていく上での確かな指針でもあります。
本日修了・卒業される皆さんも、長い伝統を有する本学の出身者として誇りを持ち、校訓「三実」の精神を活かして実社会において大いに活躍していただきたいと願っています。本学が大学という自由な空間によって、また共通教育や専門教育等によって皆さんに伝えたかったものは、「自分の頭で考える」ための知的な基礎体力と精神です。皆さんが社会に巣立ち、これから直面していく様々な問題や、身近な仕事の方法、そして生活上の悩み、さらには職場、地域や社会の発展について、先輩の言動や伝統を尊重しつつも、慣習、固定観念やしがらみに囚われずに、自分の頭で考えて、自分で課題を発見・設定し、自分で解答(こたえ)を探し続けて下さい。大学院修了・大学卒業は勉学の終わりではなく、勉学は一生続くものです。一生自分の頭で考え続け、そのために勉強し続け、大いに成長して下さい。
さて、本学は、これまで6万7千余りの修了生・卒業生を輩出してきました。修了生・卒業生は、経済界を中心に、全国で活躍し、高い評価を得てきました。修了生・卒業生による同窓会組織「温山会」は、北は北海道から南は沖縄まで全国43の支部を中心に組織され、活発な活動を行っています。皆さんもまた、本日から本学修了生・卒業生であり、「温山会」の会員です。職場や地域で本学の先輩に出会うことがあれば、先輩は皆さんに温かく接し、皆さんを応援して下さるでしょう。各地域や職場で開催されている温山会支部総会にもぜひ出席して下さい。また、皆さんも、今後は「温山会」の一員として、後輩たちを温かく見守って下さい。
最後になりましたが、皆さんが夢や希望を持って、地域や社会の発展のために、さらには世界の発展のために、益々ご健勝でご活躍いただきますよう祈念して、式辞といたします。
| 2013(平成25)年3月19日
松山大学学長 村上宏之 |