学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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1   所有者不明土地は上記の予測よりも深刻化するかもしれない。現状で問題視されている所有者不明土地は「土地」である。他方で、都市部では大規模な集合住宅が大量に建築されている。集合住宅は区分所有建物であるため、もし所有者不明「部屋」が一定数生じると、集合住宅は建て替えることもできなくなってしまう。この所有者不明部屋について本稿では扱わないが、ほとんど議論がされていない。2   ここでの対象は、「所有者台帳(不動産登記簿等)により、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地」であり、別途調査すれば判明するケースも多く、対象全てが直ちに問題というわけではない。3   所有者不明土地問題研究会「所有者不明土地問題研究会最終報告概要~眠れる土地を使える土地に「土地活用革命」~」(http://www.kok.or.jp/project/pdf/fumei2_01_13.pdf)最終アクセス日2019年11月3日3 現在、国内の所有者不明土地は2016年時点で約410万haの面積を占めると推計されており、これは九州の大きさよりも広い。そして、所有者不明土地に対する探索コストや、土地の利活用が阻害されることによる機会損失、災害復旧復興時における潜在的なコストなどを合計すると、約1,800億円もの経済損失がもたらされているとの推計もある(所有者不明土地問題研究会、2017)。そして、現状のまま所有者不明土地が増加していくと2040年には面積が約720万haまで広がり、経済的損失は約3,100億円にまで増加すると予想されている1。(図1参照)(図1)所有者不明土地の現状・推移予測2 所有者不明土地問題研究会最終報告概要PPTを参考に筆者作成3所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析第1章 現状分析

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