学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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5第1節 先行研究 所有者不明土地問題を取り上げた研究として、中西(2019)がある。中西(2019)では、所有者の登記がない1筆の土地のうち表題部に所有者の氏名又は名称及び住所の全部又は一部が登記されていないものを所有者不明土地として、所有者不明土地の登記及び管理の適正化を図るため、2019年2月に提出され、2019年5月に可決・公布された、「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案」(閣法第30号)の提出の背景となる所有者不明土地問題についての概況とそれに対する政府の対応、提出に至る経緯、概要及びいくつかの論点を紹介している。まず、地籍調査や法務省が行った相続登記未了土地についての調査を用いて、我が国における所有者不明土地の現状を述べている。そして、政府における所有者不明土地問題に対する検討や法務省における所有者不明土地への対応を踏まえ、所有者不明土地問題解消に向けての対応を提案している。この研究では、法務省は速やかに表題部所有者不明土地問題る。実際に、第2章で紹介する先行研究では、土地所有権の放棄を認めるべきだとする論調は皆無であった。 もう一方の、土地登記の義務化はすでに法整備に向けた議論が行われている。義務化は近い将来に制度化する可能性はある。しかしながら、義務化だけでは事前対策は不十分となる可能性が高い。極端な例にはなるが、刑法に禁止が明記されていても、窃盗はゼロにはならないため、窃盗をしないようにするための社会的規範、倫理観の確立や教育の提供などは施策として必要である。同様に、本稿ではどのようにすれば、所有者不明土地を減らすことができるのかというこれまでに注目されてこなかった別の事前的対策を模索する。 本稿の構成は以下の通りである。第2章では本稿に関連する先行研究を概観するとともに、本稿の位置づけを説明する。第3章では、自治体調査と家計調査の分析方法およびその分析結果を紹介する。そして、第4章でそれらの結果から導き出される所有者不明土地に対する政策を提言する。所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析第2章 先行研究及び本稿の位置づけ

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