学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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120GPAが就職活動結果の満足度にどのような影響を与えるのか論証している。 3.論証水準 分析に用いる変数の使用根拠を説明したうえで、GPAの効果を識別するために多くの変数をコントロールするなど、しっかりとした統計的手法によって論証が行われている。分析の結果、有意になる変数は少ないものの、GPAが就職満足度に与える影響を統計的に優位に示すことができており、学生が現段階で取得できている手法の水準を考慮すれば、大きな成果が出ていると評価できる。現段階で改善できる点としては、①回帰分析に使用したデータの記述統計を示す、②どのサンプルを使用したかが分かるように、結果にサンプルサイズを示す、③より高度な分析手法の収得、であろう。C:総括 本稿はGPAが就職活動における学生の就職満足度への影響を定量的に分析した重要な研究である。分析は就職活動を終えた4年次生と社会人にアンケートを行い、統計的な分析を行うことで行われた。その結果、GPAが高い学生が就職満足度も高くなることが示され、今後の大学教育を考えていく上で重要な示唆が得られている。 今後の課題は以下のとおりである。 第1は、社会人のサンプルである。社会には大学と比較して様々な特性を持つ社会人がいる。よって社会人の特性についてできる限りコントロールしていくことが必要だろう。 2点目は、変数間の関係の問題である。著者たちは本稿においてGPAはコミュニケーションスキルにも関係していると述べている。しかし、両者には以下のような包含関係がある可能性がある:もしコミュニケーションスキルを表す能力にGPAが含まれるのであれば、ランク付けの際にGPAの順位が下がるのは妥当な結果と考えられる。さらに、学生が想定する「誰とでも話せる」や「伝える力」は社会人が想定する範囲と同じかどうかなどについても整理してみるのも、今後研究を進める上で役に立つだろう。学生懸賞論文集第37号

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