学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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6第2節 本稿の位置づけ 中西(2019)の2つの課題として、1つ目に、この研究では著者が直接自治体にヒアリングやアンケートを行ったわけではないため、現地の正確なデータや声を把握しきれていないという点がある。そこで、本稿では愛媛県の4か所の自治体へのヒアリング調査に加え、四国の95の自治体に対してアンケート調査を実施している。したがって、より正確なデータや現場の声を得ることがでにおける登記を解消する方策を講じていく必要があると述べており、「表題部所有者不明土地の所有者の探索及び登記に関する措置」と「所有者を特定することができなかった表題部所有者不明土地の管理等に関する措置」の2つを所有者不明土地問題への対応としている。 また、所有者不明土地が発生することの要因の1つに、相続する土地を把握できていないことによる相続登記未了がある。土地の相続についての研究を探したが、筆者らの調べた限り、土地の相続に関する経済分析についての研究は国内では見当たらなかった。そこで、フィリピン農村での、ジェンダーの違いによる土地の相続と学校教育投資について研究したEstudillo et al.(2001)を紹介する。この研究は、フィリピンの農村家庭の息子と娘の間での土地配分と学校教育投資に関しての両親の選好を、2世代に渡って調査している。フィリピンの稲作5村で、1989年と1997年に同じ家庭で行われた相続調査のデータを用いて、回帰分析を行い、祖父母から父母(ここでは、回答者とその兄弟姉妹)及び父母から子への学校教育投資や土地相続の家庭内の配分について、パターンや決定要因について考察している。1989年は、回答者の両親から回答者とその兄弟姉妹への財の相続を調査しており、1997年は回答者から子どもへの相続を調査している。1989年のサンプルは339人(うち女性37人)の回答者とその900人の兄弟と932人の姉妹から構成され、一方で1997年のサンプルは767人の息子と715人の娘の親である275人(うち女性8人)の回答者から構成されている。分析の結果として「息子には土地を相続させることが好まれる一方、娘には教育投資が好まれている」ということが明らかになった。このことから、土地所有者の家族構成が土地の相続伝達に影響を与えている可能性があると考えられる。学生懸賞論文集第37号

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