学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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139似たような境遇にいる他者との比較」であることから、ペットを飼う理由は、「他者が飼っていないから」であることが予想される。しかしながら、1.イントロで先述したように一般社団法人ペットフード協会(2017)では、ペットを飼育するきっかけとして「生活に癒し・安らぎが欲しかったから」という理由が最も多いことから、「自分が癒される(現在よりも幸福度を向上させたい)ためにペットを飼う」のではないかと推察される。このような事情より、周囲の人(自分と似たような境遇にいる他者)がペットを飼っていないからペットを飼うのではなく、自分の欲求を満たすためにペットを飼うのである。つまり、ペットを飼うという行為は「自分と似たような境遇にいる他者との比較」はせずに、自己の世界で完結しているために現在の幸福度には影響しなかったのだと考察する。飼育経験別の現在の幸福度、ペット別の飼育年数に関してt-検定を行った結果、現在の幸福度の平均に差はみられなかったがこれも同じ理由で差がなかったのではないかと考える。 また、「性別」「年齢」「収入」「天気」「住宅」の要素も現在の幸福度には影響しないということもわかった。 「性別」、「年齢」が現在の幸福度に影響しないのは個人差のためであると考える。男性と女性において幸福度の平均の差はわずかながらあるが、男性だから幸福度が高いわけではなく、女性だから幸福度が低いわけではないので「性別」による幸福度への影響は当然ないものだと考えられる。「年齢」も同じで各々個人差があるために幸福度への影響がないのではないかと考える。 「収入」が幸福度に影響がなかった理由としては「幸福のパラドックス」が関係しているのではないかと考える。幸福のパラドックスとはGDPの上昇(所得の高低)が幸福度には影響しないという現象であり、内閣府(2011)によれば日本も幸福のパラドックスの例外ではないことが示されている。本研究で尋ねた「収入」に関して幸福度に影響がなかったのは幸福のパラドックスが要因であると考えられる。 「天気」が現在の幸福度に影響を与えなかった理由としては根本的なサンプル不足により正確な分析が出来ていないからではないかと考える。晴れ・曇りのサンプル数がそれぞれ172、125なのに対して雨のサンプル数は3と極端に少ないため分析が行えていない可能性があり、幸福度には影響がみられなかったペットを飼っている人幸せ説

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