学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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147コール「幸福度」という仮説により議論が展開している。しかしながら、一歩戻って、「なぜペットを飼うのか」という議論、仮説から始まってもよかったような気がする。「幸福」という定義の困難さを考慮すれば、むしろ「幸福度」の尺度の多様性を考慮してもよかったのではないか。 2.論証内容 幸福度の向上の分析手法として、「性別」「年齢」「回答時の幸福度」「月収」など多種の要因を挙げているのは、研究としての価値を向上させている。一方、それらの調査結果が提示だけで終わってしまっているのは惜しまれる。それらの統合的分析を試みることができればもっとハイレベルな論文となったと思われる。「結果として、ペットを飼うという行為が幸福度に影響を与えなかった」とあり仮説を裏付けることができなかったとある。そこで、もう少し分析を進めてみて、ペットを迎え入れたときの幸福度の高さの結果を有効に活用できなかったものかと思われる。 具体的には次の点を再考して欲しい。a)2-2 第一段落後半の「主に良い影響がある」と指摘しているが、同段落5行目に「それとは別に」とあるので、これは越村の調査結果から導き出されたことかどうか不明、つまり根拠が薄弱である。b)異なる調査方法のサンプルを合算すべきではない。まず、ネット調査の方法を詳しく明示すべきである。対象は松山とその周辺に限ったのか、そのコントロールはどのように行ったのかなどが重要。スーパーとロープウェイ乗り場とペットショップでは、回答者の性質(普通の買い物客、観光客、ペット好き)が異なっている。観光客は松山市民とは限らないがよいのか。c)無作為抽出ではないサンプルの場合には、その場で回答してくれた人の動向として分析結果は使えるが、より一般化して結果を解釈することはできない。この点は、論文中に明記すべきである。 3.論証水準 回帰分析およびt-検定を用いて、分析を行い、幸福度の裏付けを数値化により試みているのは、有用な研究である。結果として、各種指標と幸ペットを飼っている人幸せ説

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