学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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148福度の関連性を観測できなかったが、「自分と似たような境遇にいる他者との比較」(138P 5-3 L7~8)とひとまず予想しているのであるから、その裏付けを実施すべきであった。また、「自己の世界で完結」(139P、L10)とあるが、「癒し」に関わる幸福度指標を設けることにより、(例えば癒しと健康寿命との相関性など)ペットを飼育することによる幸福度の向上を観測できる分析が欲しかった。 敢えて、調査方法と分析手法に注文を付けるとしたら、以下の点が指摘できる。a)131ページ下から2行目。購入金額0点の解釈として「里親か野良動物の保護」とあるが、添付の調査票を見る限り、問10の回答結果からはここまでは断言できない。親戚や知り合いからもらったとも考えられる。b)重回帰分析が適切になされているかどうか疑問である。135ページから136ページにかけて重回帰分析の結果が示されているが、説明変数のうち、「性別」「飼育経験」「天気」「住宅」は名義尺度ではないのか。通常の重回帰分析には名義尺度は使えないはずである。同様に、5-1-2で、説明変数が「犬」「猫」「その他」を飼っている=1、飼っていない=0としたのか? 連続量を使うべきである。  さらに、係数は標準化されたものかどうかも示されていない。C:総括 本論文は「幸福度」という明確な定義の困難な尺度を用いて、果敢に各種要因との因果関係を導き出そうとした有用な研究報告である。とくにペットを飼うという行動の中に幸福度の一端を見出し、定量的な分析を試みたことは評価に値する。最後に、街頭でのアンケート調査、各種の検定手法を駆使した多様にわたる調査研究手法は今後の著者らの研究発展の礎となりうるものである。学生懸賞論文集第37号

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