学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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13第2節 家計調査第1項 調査方法 本節では、所有土地情報が共有されている家庭と、共有されていない家庭の相違点を探ると共に、所有者不明土地の解消のための「家庭内対応」の可能性を検討するために、アンケート調査を実施する。所有者不明土地は地方部のみならず大都市圏でも発生しているため、日本全国での調査を対象とする。そこで、調査会社に委託し、WEBアンケートを2019年7月~8月にかけて実施した。息子には土地の相続が好まれる一方、娘には教育投資が望まれている(Estudillo et al.,2001)という指摘もあることから、土地相続には家族構成も影響する可能性が高い。そこで、アンケートでは、家族構成を含めた所得や職業などの計23項目の質問を行っている。 所有者不明土地が解消されるためには、相続登記が十分になされることが重要であるが、そのためには、所有土地の情報が、親から子へ、子からまたその子へというように、次世代へと連続的に伝達されていくこと(以下、相続の伝達の連続性)が欠かせない。これを踏まえ、本稿では、家庭内での相続の伝達の連続性について分析を行う。そのため、日本の第1子出生時の母親の平均年齢が30.7歳(2015年)であることから、本家計調査では、回答者の年齢を30歳以上とし、回答者又は配偶者の両親がご存命であり、かつ子どもがいるという条件をつけている。また、回答者の地域分布が3大都市圏(東京・大阪・名古屋)に偏ることを避けるため、3大都市圏に在住する回答者のデータは全データの半数までとし、残りの半数は3大都市圏以外に在住する回答者であるという条件をつけている。第2項 分析モデルとデータ WEBアンケートを実施した結果、1,382名のデータが得られた。回答者の年齢は平均が52.7歳となっており、最高齢は83歳、最年少は30歳となっている。利用したデータの記述統計は表1に載せている。本稿では家庭内での相続の伝達の連続性について調査するため、「回答者の親から回答者へ」の場合と、「回答者から回答者の子へ」の場合の2つの場合に分けて分析を行う。 回答者が親から引き継ぐ土地相続をどの程度把握できているかを調べるため所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析

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