学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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8   コミュニティにおける信頼や規範、ネットワークなどの関係性の豊かさ14に、「あなたは、両親から受け継ぐ(相続する)権利のある土地の存在についてどの程度把握していますか。受け継ぐことが確定していなくても構いません。」という質問を行った。回答者は6段階(1:全く分からない~5:完全に把握している、6:受け継ぐ土地が無い)で回答してもらっている。6の受け継ぐ土地が無いとの回答は分析から除いている。回答者 i の土地の把握に対する認識水準をU1*とし、それが性別等の個人の特性によって決定されるとする。このとき、本稿の分析で用いたモデルは⑴式のように表現できる。 =β1,0+β1,1・genderi+β1,2・convi+β1,3・underi+β1,4・sociali+X1iβ1+ε1,i … ⑴U1,i* genderは性別(1:男性、0:女性)を表すダミー変数であり、convは普段の家庭内の会話の充実度合いを捉える変数(1:不十分である~5:十分である)である。また、underは遺言書や相続手続きについての理解度を表す変数であり、これもconvと同様に5段階の変数となっている。そして、socialは後述する社会関係資本を、X1はその他のコントロール変数を表すベクトルである。ε1は誤差項、そして、βは推定されるパラメータとなっている。ここで、U1*は直接観察不可能な変数である。アンケートで得られるデータは観察*ではなく、5段階での回答となるU1である。そのため、ε1が正規不可能なU1分布に従うと仮定すると、⑴式は順序プロビットモデルとして推定することができる。 遺言書や相続手続きについての理解度は、アンケートの、「5つの項目(遺言書と遺書の違い、遺言書の書き方、相続放棄手続き、所有者不明土地問題、相続税の計算方法)についてそれぞれどの程度理解しているか」という質問についての選択肢(1:全く分からない~5:十分に理解しているの5段階)をそのまま点数とし、それらを単純合計したものである。つまり最小値は5点、最大値は25点となっており、点数が高いほど、遺言書や相続手続きについての理解度が高いことを示している。 また、社会関係資本8を測定する指標として、ボランティアやスポーツ関係のグループへの参加割合などの「市民参加」、地域への信頼や愛着の割合など学生懸賞論文集第37号

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