学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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9   「あなたは相続の際の親族間でのトラブルを経験したことがありますか」という質問を行い、「はい(経験したことがある)」であれば1、「いいえ(経験したことはない)」であれば0としている。18     *** p<0.01,** p<0.05,* p<0.1log-likelihoodLR値サンプル数 全サンプルを用いた場合では、性別の係数が5%水準で有意にプラスであった。これは、女性より男性のほうが相続する可能性のある土地の存在を把握していることを意味している。この傾向は、サンプルを長子に限定した場合も同様であった。したがって、土地の相続には、息子のほうが好まれており、Estudillo et al.(2001)と整合的な結果が得られている。Estudillo et al.(2001)は途上国であるフィリピンを対象としているものの、先進国である日本でも同様の傾向にあることが示された。 一方で、回答者が一人っ子の場合では有意な結果は得られなかった。つまり、土地の相続に関して、息子であるか娘であるかが関係するのは、子が二人以上の家庭の場合のみとなる。一人っ子の家庭では、子の性別に関係なく、相続する可能性のある土地の存在を伝達しているということである。 遺言書や相続手続きについての理解度の係数はすべての場合で、1%水準で有意であった。したがって、遺言書や相続の手続きについて理解している人は、土地の相続について関心がある、または土地を相続する意識が高いと言える。 また、相続の際の親族間でのトラブルの経験9の係数は、回答者が長男または長女の場合では1%水準、回答者が一人っ子の場合では10%水準で有意な結果となった。どちらの係数もプラスであることから、相続の際の親族間でのトラブルの経験は、相続する可能性のある土地の存在について知るきっかけを与えていると考えられる。 普段の家庭内での会話の係数では、回答者が全サンプルと長男または長女の場合のみ、有意にプラスであった。つまり、家庭内での会話が普段から十分に行われている家庭ほど、土地の相続について話し合っているのである。家庭内学生懸賞論文集第37号-1179.4431.82***927-688.8267.3***552-105.9129.03***119

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