学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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2111   存命であれば1、他界していれば0としている。第5項 普段の家庭内の会話 家計調査によって得られたデータを順序プロビットモデルによって分析したところ、「回答者の親から回答者へ」の場合と、「回答者から回答者の子へ」所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析     *** p<0.01,** p<0.05,* p<0.1サンプル数 遺言書や相続手続きの理解度の係数がすべての場合で、1%水準で有意にプラスの結果となった。遺言書や相続手続きの理解度が高い人ほど子に対して、受け継がせる可能性のある土地について伝達しているのである。これについては、遺言書や相続手続きについて知っている人は、相続に関する意識が高い可能性があるため、このような結果になったと考えられる。 普段の家庭内の会話の係数は、息子のみの場合では5%水準で有意にプラスの結果が見られた。回答者の親から回答者への分析結果と同様、普段の家庭内の会話が十分に行われている家庭ほど、相続について話し合っているのである。しかし、娘のみの場合では、有意な結果は見られなかった。このことから、親は息子に対しては、土地を受け継がせる意識が高いが、娘に対してはその意識が低いと考えられる。 また、自治体への土地の寄付の経験の係数は、息子のみの場合では1%水準、娘のみの場合では10%水準で有意にプラスであった。これは、土地の相続について、家庭内で話し合ったところ、子へ相続させることが困難であるという結果に至り、土地の所有権を手放すために自治体へ土地の寄付を行った可能性がある。 回答者の母親の有無11では、娘のみの場合に5%水準で有意にマイナスという結果が得られた。しかし、回答者の父親の有無では有意な結果は見られなかった。つまり、回答者の母親が亡くなると、回答者は娘に受け継がせる可能性のある土地について伝達していることを意味している。親は息子には、日常的に、土地を相続させる意識を持っているが、娘には自身の母親の死など、特別な出来事が起こった際に、相続させる意識が芽生えると考えられる。1,005344253

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