学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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2412   各地方団体が自治体を運営していくために必要となる一般財源のこと。第2節 政策提言第1項 自治体の寄付の受け入れの促進 初めに、自治体の寄付の受け入れを積極的に行うことができるようにするための政策を考える。板垣(2017)は所有者不明問題を抜本的に解決したいのならば、管理に行き詰った土地を国・自治体が受け入れるべきであると述べている。そこで本稿では、自治体に利用価値のない土地を受け入れ、その土地を管理できるほど財政的な余裕がないという問題を解消するための制度変更を提案したい。 その事前的アプローチとして、基準財政需要額12の見直しを提案する。現在、基準財政需要額の中には土地に関する項目は含まれていない。そこで、土地に関する項目を追加し、所有者不明土地の解消に向けての財政的な支援を行うことによって自治体での土地の寄付を受け入れる準備を行う。提案のように、寄付として受け入れた土地の程度が基準財政需要に反映できるようになる また、順序プロビットモデルを用いた家計調査の分析結果から家庭内で土地の相続が行われるには、普段の家庭内の会話が重要であることや、社会とのつながりが強い人ほど相続する可能性のある土地の存在を把握していることが明らかになった。さらに、普段の家庭内の会話について同様に順序プロビットモデルを用いて分析を行ったところ、家族との食事や旅行は、家庭内の会話を促進するために重要であることが示された。 そのため、所有者不明土地問題を解消する自治体側からの事前的アプローチとしては、回答したすべての自治体で土地の寄付の要望があったと回答したことを踏まえて、自治体が土地の寄付を積極的に受け入れることが有効であると考えられる。また、家計調査の結果からは、家庭内で土地の相続の伝達が積極的に行われるためには、普段の家庭内の会話が十分に行われていること、社会関係資本が豊かであることが必要であると考えられる。 以上より、本稿では所有者不明土地の発生を防ぐ事前的対策として、①自治体の寄付の受け入れの促進、②家庭内での普段の会話の促進、③豊かな社会関係資本づくり、の3つの政策提言を行う。学生懸賞論文集第37号

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