学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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27し、食育推進全国大会や食育をテーマとしたイベントを実施している18。このような自治体主導の「食育」や「共食」の推進は、普段の家庭内の会話の促進にもつながると考えられる。 しかし、「食育」や「共食」の推進が機能するには、家族と食事を共にする時間を確保できることが前提としてある。従来から「男性は仕事」という性別役割分担の固定観念が強く残っている日本では、父親が家庭内での時間を十分にとることができないケースは珍しくない。女性の社会進出が著しい現代では、共働きの家庭も多く、子どもが一人で食事をとっていることもあるだろう。そこで、父親のワーク・ライフ・バランスが重要となる。尾形(2010)では、共働き家庭の父親のワーク・ライフ・バランスが夫婦関係と子どもである青年のワーク・ライフ・バランス観に与える影響について分析し、家族システムの中に形成されるワーク・ライフ・バランスにどのような影響をもたらすかについて検討している。この研究によると、父親が家庭への関与が高く、仕事への関与も高い家庭の子どもは、休日に家族と多くの時間を過ごし、家族と多くの会話をしていると認識していることが示されている。つまり、父親のワーク・ライフ・バランスの実現が家族の会話を高めることのドライバーとなっているのである。ワーク・ライフ・バランスを実現するためには、「働き方改革」の推進が有効であると考える。2019年4月より本格始動した「働き方改革」であるが、長時間労働の解消や、有給休暇の取得などが実現できれば、人々のワーク・ライフ・バランスを実現することができ、家族と過ごす時間、家族と食事を共にする時間を十分に確保できるであろう。こうした近年の「働き方改革」の流れは所有者不明土地抑制の点からもサポートできるものである。なぜなら、父親のワーク・ライフ・バランスが実現することで、家庭内の会話を充実させ、その結果として間接的に親子間での相続土地の伝達を円滑にさせる、つまり所有者不明土地の防止につながるからである。 次に、家族との旅行の頻度を高める政策として、家族旅行のための補助金の給付やキャッシュバックを提案する。現在、空港利用推進事業等のために、夏休みやGW中の家族旅行に対して、旅行代金のキャッシュバックキャンペーンを行っている企業・団体は多く存在している。特に、鳥取県鳥取市に存在する団体では家族旅行に限り、旅行代金のキャッシュバックを行っているのだ所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析

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