学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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 本稿を執筆するにあたり、時間などの制約上考慮できなかった点が存在する。本節では、今回の研究の課題を挙げ、今後の研究をより良いものとするための足掛かりとしていきたい。 本稿では、自治体へのヒアリング・アンケートを四国のみにしか行うことができていない点である。所有者不明土地は日本各地の都市部から地方部まで多くの地域に存在している。都市部と地方部では、地価や人口、土地の面積などが全く異なってくる。それにより、都市部と地方部では問題とされている点が違うこともあるだろう。しかし、今回のヒアリング・アンケートは四国のみを対象としているので、“四国では”という制約がつく。各都道府県全ての自治体にヒアリング・アンケートを行うことで、より精度の高い分析結果を得ることができると考える。 本稿では、所有者不明土地の解消に向けて自治体と家計の2つの視点から影響を与えることができる事前的アプローチを検証してきた。所有者不明土地を解消するためには、住民からの土地の寄付を積極的に受け入れることによって所有者不明土地の発生を抑制することや家庭内での会話の促進、社会関係資本を豊かにすることによって家庭内での相続の連続性の確保をすることができ、相続登記の未了を防ぐことができるという結論に至った。しかし、今回は四国の自治体のデータのみを用いて分析を行ったことにより、様々な制約が生じているため、一般化された結論とは言えない。今後は、本稿での課題を基に、国土面積が小さい日本で土地の効率的な利活用ができるような対策を模索していきたい。31・中西絵里,「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律案-所有者不明土地の解消に向けて-」, 立法と調査 No.411, 2019年・Jonna P. Estudillo, Agnes R. Quisumbing,“Gender Differences in Land 所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析第5章 まとめと今後の課題先行研究・参考文献・データ出典

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