学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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35査も実施しており、その行動力は高く評価できる。それらの調査と実証分析により、概ね妥当な主張が展開されている。 ただ、自治体の財政問題を解決する手段として、国からの財政支援を提案しているが、財政不安を抱えているのは国も同様である。そのような現実の問題を考慮した上で、政策の妥当性を論じてほしかった。 また、論証の根拠となるアンケートの設計にやや強引な印象が見受けられた。特に、説明変数が何から導き出されたのかに関する記述がない点や、普段の家庭内の会話がざっくりと一括りにされている点(例えば、親や子と同居、別居しているかによって、回答者が想定する「家庭」が異なるのではないか。また、現在同居している家族との関係は良好であるが、親や子とはあまり関係が良くないこともあり得る。)があった。 3.論証水準 得られたデータを様々な観点から分析しようという努力が感じられた。また、先行研究として、日本の論文だけではなく英語の論文についても引用している。英語論文にチャレンジした、というだけではなく、それらはこの論文の結論に大きな役割を果たしており、この点も高く評価したい。また、分析結果から家計と自治体に対する政策提言をしているが、先行研究やデータ等を根拠として、政策を一つ一つ丁寧に説明している印象を受けた。C:総括 本論文は、どのような事前的アプローチを行うことで、所有者不明土地の発生を防ぐことができるのかを、定量的に分析しようとするものである。研究のモチベーションが明確であり、新規性のある結論も多く提示していることから、この研究による貢献は大きい。また、研究テーマに対して適切な分析手法を用いているが、順序プロビットモデルという高度な分析手法を使用していることも高く評価したい。全体的に見て、学部生の論文としては極めて優秀であると考える。 ただ、その主張の根拠となるアンケートの設計にやや強引な印象が見受けられた。本論文では、説明変数が何から導き出されたのかに関する記述がな所有者不明土地の解消に向けて 自治体調査と家計調査による実証分析

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