学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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46視聴時間は短くなっている。このように、ゲーム使用によって勉強時間が削られ学業成績が低下すると一概に論ずることはできないのである。 木村.他(2000)によると、テレビゲーム使用と社会的適応性の相関関係を調査するため、東京都内の私立男子学生(198名)、金沢工業大学の男子学生(177名)を対象にアンケートを実施した。その結果、男子大学生はゲームを使用することにより、「共感性」が下がることがわかった。この共感性とは、「ほかの人の感情や意見に同感すること」を指す。対して、男子高校生はゲームを使用することによって「共感性」が上がり、社会的不安がなくなることがわかった。大学生と高校生で結果が一致しないため、ゲーム使用によって悪影響が必ずしも出るとは言えない。 望月(1996)によると、学業成績以外にもゲームの使用によって得られる効果があるのかを調査するため、日本の中高生を対象にアンケートを実施した。その結果、ゲームの使用によって得られる効果は、「友達と遊ぶ機会が増えた」(43.0%)、「友達の数が増えた」(35.9%)、「他人のことを気にするようになった」(18.9%)などであった。ほかにも「想像力がついた」「決断が早くなった」「忍耐力がついた」といった効果が出ている。以上のことからゲームの使用によって子供たちの社会的な活動を促進する契機を与えていることが示唆されている。 岡田(2009)によると、部活動参加によって、どのような心理社会的適応への影響があるのか調査するため、愛知県・東京都の公立中学校6校(894名)を対象にアンケートを実施した。その結果、部活動に参加している生徒は、学校生活の諸領域(運動部積極・消極群、文化部積極・消極群、無所属群)や心理適応の項目(友人関係、クラスへの意識、他学年との関係、教師との関係、学業への意欲、進路意識、校則への意識)の得点が高くなっていた。その一方で、部活動に参加していない生徒は、部活動に参加している生徒よりも得点が低くなった。 以上の先行研究より、ゲームの使用は、学業成績や性格に影響を与えることが分かった。しかし、ゲーム使用による影響には、負の影響だけでなく、正の影響もあり、一概に「ゲームの使用は悪影響を及ぼす」と言い切ることはできない。そこで、本稿では、以上の先行研究を踏まえ、「eスポーツを正式な部学生懸賞論文集第37号

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