学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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65上より、部活動とは本来、その活動を通して生徒の人間性の向上や学校生活に豊かさをもたらすために用いられる「手段」であり、部活動それ自体を目的としている現代の部活動の在り方は、本来の部活動の在り方から大きく逸脱していると言える。 松山北は「教育領域から逸脱している」という理由からeスポーツの部活動導入に反対している。しかし、本調査でも明らかになったように、まだ人々のeスポーツに対する興味・関心が低く、そして実際に松山北でeスポーツ部を導入しているわけではないのにも関わらず、なぜそれが教育領域から逸脱していると断言できるのだろうか。前時代的な先入観によって、確かな根拠もないまま新たな文化に対して恣意的な判断を下すことは、教育者の在り方として疑問を抱かざるを得ない。もしeスポーツ部の活動のなかで責任感・連帯感などの人間性を向上させることができれば、たとえ身体を動かす他のスポーツとは異なっていようとも、それは十分に部活動の意義に即したものであると言える。先述したように、部活動とはあくまで学校生活に豊かさをもたらし、その活動を通じて学生の人間性を向上させるための「手段」である。そのため、「TVゲームは身体活動を伴わないものであるから」といった理由で教育領域から逸脱していると判断する行為は、むしろそれこそが学習指導要領から逸脱していると言える。 伊予は何よりも生徒への健康被害を懸念していた。確かにeスポーツに熱中しすぎることで、視力の低下や運動不足による免疫力の低下などの健康被害を招く恐れがある。しかし、そのようなリスクをはらんでいるのは何もeスポーツのみに限ったことではない。 青木、松本(1999)では、(以下、引用)“『スポーツ傷害の過去の発生率はスポーツ少年団で11.9%、中学生で54.1%、高校生で62.5%に及び、高校生ではスポーツ種目や学年によっては発症率が8割を越える』”(引用終わり)と示されている。つまり通常の運動部においても、健康を損なうリスクは十分にはらんでいると言える。また文化部においても、活動に熱中しすぎるあまりに生徒の運動不足を招く可能性は大いにある。にもかかわらず「健康に悪影響を及ぼすリスクをはらんでいるから」といった理由でeスポーツに対し否定的な態度をとるのは、自身が責任を負うことを恐れ、生徒の活躍の場を狭めようとするeスポーツって部活動にしてもいいの?

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