学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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1   定義については、辻.他(2019)を参考に作成した。2   2018年度入学生以降、コース制は廃止された。80 就職活動時には情報の非対称性が存在する。情報の非対称性[1]とは、財や情報が取引される場合、どちらか一方が、他方よりも情報をより多く、あるいはより正確に持つ状況を意味する。就職活動時に情報の非対称性が生じてしまう理由として、以下の理由が挙げられる。就職活動生が就職に不利になることを避けるために、不利な情報の一部を隠蔽してしまう。情報の一部を隠蔽してしまうことで、採用を行う企業が就職活動を行う者に関する全ての情報を把握することが困難になる。結果として、就職活動生が情報優位となり、情報の非対称性が生じてしまう。 就職活動時には、この情報の非対称性を部分的に補うシグナルの1つに、大学における学業成績の指標として広く一般に使用されているGPA(Grade Point Average)が存在する。西垣(2003)によると、GPAとは履修登録している授業で取得した成績評価の合計÷履修登録授業科目数で算出される。文部科学省(2017)によれば、一般的にGPAは0.0~4.0の範囲で評価が算出される。例えば、履修登録をしている授業科目数が5科目(1科目2単位と仮定し、合計10単位)、履修登録している授業で取得した成績評価がそれぞれ1.0・1.0・2.0・3.0・4.0だと仮定する。上記の式より、(1.0×2(単位)+1.0×2(単位)+2.0×2(単位)+3.0×2(単位)+4.0×2(単位))÷10(単位)=22÷10=2.2のように算出される。しかし、GPAは単に大学での学業成績の指標というだけではない。松山大学では、GPAの上位者(=成績上位者)に向けた奨学金制度(松山大学成績優秀者スカラシップ制度特別奨学金)がある。また、同学内では、3年次以上のコース選択[2]を行う際に、上位のGPA取得者からコース選択の優先権が与えられている。国外の事例としては、アメリカの一部の損害保険会社において、GPAの一定基準を満たしている被保険者は保険料が割引されるということを半田(2008)が示している。このようにGPAは、修学過程を通じて進路や経済支援などに活用しうる指標である。なお、国内のGPA制度の現状については、2.先行研究⑴で詳細に述べる。学生懸賞論文集第37号1 はじめに

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