学生懸賞論文集第37号2019(令和元)年度
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3   定義については、辻.他(2019)を参考に作成した。81 しかし、シグナルの1つであるGPAは、就職活動生の採用時には重視されてこなかった。その根拠として挙げられるのが、日本経済新聞(2018)の記事である。(以下引用)“企業が新卒[3]採用の選考時に、学生の成績や履修情報を評価するケースが増えている。学生の本分はそもそも学業のはずだが、これまではコミュニケーション能力やバイタリティーなど「人物本位」の評価が主流だった。”(引用終わり)、(以下引用)“学生に成績表を提出させる企業はこれまでもあったが、集計や管理が煩雑なこともあり、これまでは「ちゃんと卒業できそうかどうかを内定時に慣例的に確認する程度」(大手企業の採用担当者)。”(引用終わり)というように、採用時に評価されるのは対人スキルが主流であり、学業成績は慣例的に確認する程度であった。学業成績が採用時に評価されなかった原因を辻(2013)は、学生がまじめに講義を受講していない、成績評価がいいかげんであるなどの要因が、大学での学業成績を採用の参考にすることを難しくしていると述べている。 就職活動に関して、種市(2011)は、就職活動では様々なスキルを持っていても伝える力がなければ評価されない可能性が高いため、内容を表現できて柔軟なコミュニケーションがとれるスキル、つまり「ソーシャルスキル」が必要とされることを示している。また、内藤(2013)は、ソーシャルスキルが高くなるほど、学業成績も高くなることを示している。この2つの先行研究から、関連性が無いと思われる学業成績と就職活動であるが、学業成績が高い人は、就職活動に必要なソーシャルスキルを高い状態で有しているため、学業成績の低い人と比較して、就職活動に有利になると考えられる。 上記の2つの先行研究から私たちは、「GPAが高い学生ほど、就職活動に必要なソーシャルスキルを高い状態で有している分、第1希望の企業に就職している」、つまり「GPAが高い学生ほど、就職予定の企業に対する満足度(以下、就職満足度)が高い」という仮説を立てた。 また、日本経済新聞(2018)で、学生の成績や履修情報を取りまとめる企業向けのサービスである「大学成績センターデータベース」が普及したことで、学業成績の客観的な評価につながっている。そして、(以下引用)“「企業が新就活を握るファクター -その1つのGPA-

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