松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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3ている都道府県の数を表している。医療費無償化を実施している自治体は、2019年時点で1都1道2府35県に上る。厚生労働省(2016)の子どもの医療制度等の在り方に関する検討会において、医療費無償化は地域に子育て世代の流入を促進させ、かつ流出の抑制にも効果があるという見解を示している。医療費助成制度を取り入れる自治体は今後とも増えていくと予想される。しかし、この医療費助成制度が本当に人口減少を食い止めることに貢献しているのかは明らかになっていない。また、医療費助成制度に関する研究の多くは特定の地域や都道府県を対象にしたもので、全国の自治体を対象としている研究はほとんど行われていない。 そこで本稿では、全国の自治体を対象に、各自治体の医療費助成制度の導入が、制度の実施の前後で人口や人口の流出入に対して、どのような影響をもたらしたかを実証分析によって明らかにする。その際、それぞれの自治体の特性をコントロールしたうえで、パネルデータを用いた検証を行う。本稿の構成は以下のとおりである。まず第2章では医療費助成制度の基本的な概要、歴史、過去の研究、全国的な現状を述べる。第3章では、医療費助成制度の効果を検証するための全国の自治体データと、推定手法について述べる。第4章では、推定結果に基づいて検証を行う。第5章は結論と今後の課題について述べる。図1 中学卒業まで医療費無償化を実施している都道府県(2019)子ども医療費無償化は少子化の進行を止めることができるのか

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