松山大学(学生懸賞論文集)第38号
11/93

42.1.歴史 1961年に国民皆保険制度が確立し、国民が一定の負担で医療を受けられるようになった。西川(2010)によると、子ども医療費助成制度は1961年に岩手県和賀郡沢内村(現和賀郡西和賀町)において、1歳未満の乳児を対象に国民健康保険にかかる医療費の全額給付を実施したことに始まるとされている。この沢内村は、秋田県との県境に位置する山間の村で、貧困やそれに伴う栄養不足から乳幼児の病気が多かった。1955年には生活保護受給世帯が全体のおよそ10.4%にまでのぼり、乳児死亡率は6.9%という高い数値を記録した。この問題を解決するために、沢内村では乳幼児医療費の無料化に加え、同時期に保健師を増員して保健教育活動などに取り組んだ。それによって医療費助成制度が導入された翌年の1962年には乳児死亡率0%を達成した。その後、1972年から1974年にかけて、5都府県を除く道県が乳幼児の医療費助成事業に対して県費による助成を導入するようになった。1970年代は0歳の乳児を対象として医療費助成制度が行われ始めた時期である。 そして、2000年頃には少子化対策の掛け声とともに、順次対象年齢範囲の拡 医療費助成制度とは保険診療による医療費の自己負担分を本人に代わって負担する制度で、国や都道府県ではなく市区町村によって行われる施策のことである。子ども医療費助成制度は、ⅰ)対象年齢の範囲、ⅱ)助成を行う際の自己負担額の上限、ⅲ)対象世帯に所得制限を行うか否か、ⅳ)給付方法、がそれぞれの自治体で異なっている。また上記にもあるが、子ども医療費助成制度は、都道府県の制度を基礎として市区町村が実施主体となって行うものである。そのため、都道府県が定めた対象年齢及び自己負担、所得制限の範囲内で、都道府県から市区町村へ交付金や補助金を与えるという形をとっている。つまり、最終的には都道府県が費用の負担を行っている。市区町村としては一般財源からの支出を決定すれば、都道府県の基準に上乗せして制度を実施することができる。この章では、医療費助成制度の歴史や現状、助成制度の影響を検証した先行研究について紹介する。学生懸賞論文集第38号第2章 概要

元のページ  ../index.html#11

このブックを見る