松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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52.2.先行研究 松田(2013)は、全国の市区町村を対象に、アンケート調査を用いて、医療費助成を含めた様々な少子化対策への取組の効果を検証している。少子化対策の効果として期待が大きい反面、実際に効果が表れたものは少ないと述べている。実際に表れている効果として「出生数の増加」よりも「他自治体からの転入者の増加」がある。この結果に対して、「市区町村における少子化対策が自治体間で子育て世代の奪い合いにつながっている」と述べている。より効果的な少子化対策を実施するために、「既存の施策の有効性を検証すること」や「交付金の増額」、「自治体が実施する制度の自由度を高めること」を提言している。 別所(2012)は、乳幼児と児童(12歳まで)を対象にした各自治体の医療費助成制度が医療サービスの消費と健康に与える効果について検証している。結果として、「小学生の外来通院への医療費助成の正の効果を示唆する一方で、小学校低学年までの通院や、子どもの健康状態の良さとの関係は確認されなかった」と結論づけている。なお、この研究はあくまで乳幼児医療費助成が対象であり、本研究が対象とする、医療費無償化制度が対象ではない。 小林・西川(2008)は、老人医療費無償化の変遷と、近年の乳幼児医療費助成拡充の動きを比較した研究を行っている。老人医療費の無償化は高齢者の過剰医療の発生からその存続が困難になった。対象年齢の引き上げを行い、存続を図ったが結果的に廃止されている。乳幼児医療費の助成に関しても上記と同じように過剰医療になる恐れがあると指摘している。また、助成制度が出生率に効果的な影響を与えている検証がないことから、施策の実施は慎重になるべきだと述べている。一方で過剰医療に関しては、「安易な受診や医療費の膨張にはつながらない」という意見もある。「コンビニ受診」が可能になることか大などが図られた。これにより就学前のみならず、就学後も対象とする自治体が現れ、福祉施策から子ども全体を対象とする一般施策へと装いを変えた。この新たな動きを全国的に見ると、東京都が先陣を切って制度を導入し、次いで比較的財政力のある県や政令指定都市が続き、最後に地域に大企業などが属する、財政力のある市町村がその後を追う形となっている。子ども医療費無償化は少子化の進行を止めることができるのか

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