松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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3   本田孝也(2017)、「子ども医療費助成制度の推移と患者の受診動向の分析」4   全国の自治体の公式サイトにある医療費助成制度に関する記述を参考に著者らが作成。62.3.現状 医療費助成制度の詳細を調べるために、688市を対象にして各自治体の公式ホームページに記載されている医療費助成制度に関するページを参考にグラフにまとめた。図24は、全国の自治体のうち、2019年時点で、対象年齢範囲を乳幼児、小学校卒業まで、中学校卒業まで、高校卒業までの4つの年齢対象に区分し、医療費無償制度の実施率(入院・通院の全額無償)の全国平均を表したものである。なお、実施率100%とはその県が擁するすべての市で入院・通ら、病気の早期発見につながり、結果として医療費軽減につながっているのではないかということである3。 足立・齋藤(2016)は、乳幼児医療費助成制度の対象年齢拡充の動きに着目している。彼らは「制度について自治体が他の地域の行動を考慮し戦略的に政策を決定すると仮定し、他地域が自地域の政策決定に影響を与えるかどうか」について検証している。その結果として、助成制度の対象年齢を拡充するのは「市町村間のヤードスティック競争があるから」と結論づけている。乳幼児医療費助成制度において、ヤードスティック競争が起こっているときには、補助金助成の支出が生じている可能性がある。そこから乳幼児医療費の適正化を議論することの重要性を主張している。 日下(2018)は、子ども医療費助成制度の現状を踏まえて、当制度が子育て世帯の負担軽減、子どもの健康増進に寄与しているだけでなく、地域活性化にもつながっていることを指摘している。そして、現在市町村単位で行われている当制度は、国の制度として中学校卒業まで無償化に取り組むべきだと提言している。 以上より、子どもの医療費助成制度が少子化対策として効果的であるのか否かは賛否が分かれている。また、現在行われている市区町村単位での医療費助成制度に関する論文は少ない。本稿では、先行研究で検証されてこなかった医療費助成制度が人口の流出入に与える影響に注目し、パネルデータを用いて検証を行う。学生懸賞論文集第38号

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