松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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93.1.データ 全国の自治体の基本データが掲載されている都市データパック(2009、2019)から、分析に必要なデータを収集した。医療費助成の効果を検証するため、医療費の無償化があまり実施されていなかった2009年、ある程度実施が進んだ2019年(10年後)の2時点のデータを収集して、パネルデータを作成した。「都市データパック」には、各自治体の基本情報の他に、医療費助成制度の導入状況、医療費助成の対象年齢、所得制限などの情報が掲載されており、本研究では、「通院」と「入院」の2つに注目し、それぞれ「小学校卒業」まで、「中学校卒業」まで医療費が無償となる制度(所得制限もなし)を導入している自治体と、そうでない自治体を比較して検証を行う。表1は分析に用いるデータの基本統計量(平均、標準偏差、最小値、最大値、観測数)である。 表1より、2009年時点で、所得制限なく医療費の無償化を実施している自治体は少ないことが分かる。通院を対象とすると、小学校卒業までだと全国の自治体のうち12%、中学校卒業までだとわずか4%の導入にとどまっている。一方で、入院を対象とした場合は、通院よりも導入率が高く、小学校卒業までで29%、中学校卒業まででも16%の自治体が導入していた。その後、医療費無償化を導入する自治体が増加し、2019年時点では、通院を対象とした場合、小学校卒業までで76%、中学校卒業までで74%と全体の3分の2以上の自治体が導入するまでになった。これは入院を対象とした無償化も同じような傾向である(小学校卒業までで80%、中学校卒業までで78%)。このように、2009年と2019年の各自治体の医療費無償化導入状況には大きな違いがあるため、この2時点のパネルデータを利用して、この制度が自治体の人口や人口の流出入、また出生率に与える影響を検証することとした。 分析に用いる各自治体の特性について概観しておく。2009年時点と2019年時点の「都市データパック」より、各自治体の人口、流入人口、流出人口、人口密度、合計特殊出生率6(厚生労働省の人口動態統計特殊報告より入手)、就業人口比率として1次産業、2次産業、3次産業に従事する人口比率、完全失業率、人口1人当たり地方税収額、納税者1人当たり所得、住宅地平均地価、世帯あたり自動車保有台数、一般診療所数、1万人あたり医師数、幼稚園数、保6   15歳から49歳までの女性が生涯の間に産む子供の数を表したもの。子ども医療費無償化は少子化の進行を止めることができるのか

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