松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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 この度2020年度松山大学学生懸賞論文集を刊行いたします。本学における学生懸賞論文の制度は、1975年に始まったとても歴史のある制度です。今年度はコロナウイルス感染症の拡大に伴い、大学生活のみならず世界中の人々が慣れ親しんだ日常生活を失い途方に暮れる一年でした。そのような状況の中でもこの由緒ある論集を例年と変わらずに刊行できることは、大きな喜びであります。 今年度は松山大学においても多くの授業をオンライン授業へ切り替え、大学全体で一丸となって試行錯誤を繰り返しながら、なんとしても学びの機会を確保することに努めた一年でした。学生の皆さんも、多くの困難に直面されたことと思います。そのような厳しい状況の中にあっても本制度に五編の論文の応募があったことは、変わりゆく環境の中でもひたむきに学びを追求しようとする学生の皆さんの不屈の姿勢の現れだと思います。 学生懸賞論文の一次審査は執筆要領に従って書かれているかどうか、形式的な側面について審査します。一次審査を通過した論文のみが二次審査に進むことができます。二次審査においては、当該論文の内容に近い研究をしている教員二名が匿名で厳正な審査を行います。このような厳しい審査を通過した三篇の論文が本論集に掲載されております。いずれも時世を反映した興味深いテーマが取り上げられています。 金賞を受賞した経済学部の仙波諒平さん(他5名)の論文「子ども医療費無償化は少子化の進行を止めることができるのか」は、近年大きな社会問題となっている少子化を食い止める手立てを模索する論文です。長期間にわたり国民的な関心事でありつつも解決策の見つからない難題に取り組んだ秀逸な論文です。テーマの設定が素晴らしいのみならず、講評にも示されているように、文章表現が理路整然としており学生論文の域を超えたレベルに達していると高い評価を得ています。比較的多くの自治体で実施されている中学校卒業までの医療費無償化制度に注目し、人口が100万人未満の自治体を分析対象として、医療費無償化制度が人口流入に与える影響を広範囲なデータに基づき分析することを試みています。医療費無償化制度の実施が人口減少を食い止めることが総合研究所 前所長 細川 美苗2020(令和2)年度 学生懸賞論文の発刊にあたって

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