松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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174.5.分析における問題点と課題 ここでは、モデル(1)から(4)までの推定における、4つの課題について述べる。1つ目は、人口の流出入データについてである。人口の流出入のデータは、前年からの増減データである。本来であれば自治体ごとに医療費無償化前後でデータを入手して用いる必要がある(例えば、2014年に導入されたのであれば、2009年から2013年の毎年の人口流出入データの平均値と、2014年から2019年の毎年の人口流出入データの平均値を用いる)が、各自治体によって導入時期が異なっており、正確なデータの入手が非常に困難であった。そのため、本研究では、多くの自治体で医療費無償化が導入された2009年と2019年の期間に注目し、2時点のみのデータを用いて分析を行った。しかし、前述のように、より精緻な分析のためには、それぞれの自治体の導入時期に合わせてデータを入手する必要がある。 2つ目は、分析に用いた市町村別の合計特殊出生率のデータは、2008年-2012年と2013年-2017年のそれぞれ2つの時期に調査された統計のうち前者を2009年の値、後者を2019年の値として用いた。これらは入手データの制約による代替的な手段であるが、特に後者は2019年の値ではないため、分析結果に影響を及ぼしている可能性がある。今後2018年-2022年のデータが公開された時期に、改めてそのデータを用いた検証が必要となる。 3つ目は、各モデルにおける説明力である。表2における、人口の流出と流入を被説明変数としたモデル(1)と(2)では、モデルの決定係数が0.75以上あり、モデルの説明力は高いと言える。一方で人口を被説明変数としたモデル(3)と、出生率を被説明変数としたモデル(4)では、決定係数が非常に低い値となっている。この原因としては、本来推定モデルに含むべき説明要因が不定数項観測数決定係数(=全体)“***”、“**”、“*”はそれぞれ1%、5%、10%水準で有意であることを表している。 [ ]内の値は標準誤差を表している。子ども医療費無償化は少子化の進行を止めることができるのか1.505 0.000 ***[0.0120]1,3320.026 

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