松山大学(学生懸賞論文集)第38号
3/93

できるのかという課題については、その制度が人口流出の抑制につながるという結果が得られた一方で、そのこと自体がすでに医療費が無償化されている地域間での人口移動を相殺する可能性が高いと結論している。人口流出及び流入に関して分析を進めるためには、出生率等のその他の要因を考慮に入れる必要があることについてもすでに筆者らは自覚的であり、さらなる発展が期待できる論文です。 銀賞を受賞した経済学部の岩尾早恵果さん(他2名)の論文「水道水は飲める必要があるのか」は、万人にとって生活の重要な基盤である水道水について、そのコストと質の問題に関する人々の意識を分析する論文です。近年のミネラルウォーター等の消費量の増加から鑑みて、水道水を飲料用として利用する人が減少しているではないかという発想のもとに、健康被害が出ない程度にまで水質を下げることで料金を引き下げるほうが好ましいかどうかについてアンケートを基に分析しています。講評においても指摘されているように、実施されたアンケートの設問設計や回答者の年齢に偏りがみられるなどの改善点があるものの、身近な事柄に問題意識を持ち調査に取り組む意欲的な姿勢がみられる論文です。 銅賞を受賞した経済学部の丸山優香さん(他3名)の論文「ネット店舗と実店舗でのアパレル商品の購入 どちらがお得なのか?」は、今後ますます拡大すると考えられるネットを通じた商品の購入と実店舗での購入を比較するものです。インターネットを通じた購買における消費者の不安に注目し、特に失敗経験が多いと思われるアパレル商品について分析しています。講評においても指摘されている通り、両購入形態を総合的に比較考察するためにはさらに多くの要因を参照する必要があり、本論ではオンラインストアと実店舗のどちらでアパレル商品を購入したら良いのかについては将来的に結論を出したいと結んでいます。経済的な損得という観点に縛られず、多様な視点から両購買形態の実情を推し量ろうとする視点を持つ論文です。 最後になりますが、学生に適正な研究活動及び研究発表の在り方をご指導くださり、学生の自主的な学びを奨励する本制度にご理解とご協力を頂きました先生方には、心より感謝いたします。今後ともどうぞよろしくお願い致します。

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る