松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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32じる人が多いためであろう。そのため、政府と国民の間に水道水に対する認識についてのギャップがあると考えた。そこで私たちは、水道水を飲んでいる人が少ないのであれば、水道水の水質を、健康に害を及ぼさない程度まで下げ、その分水道代を下げたほうがいいのではないかという仮説を立てた。 本研究で使用する先行研究は「水道水に対する意識構造とその影響要因」((2012)石本知子、伊藤禎彦)と、本研究の内容に直接関係はないが分析手法を参考にした「飲料水リスク削減に対する支払意思調査に基づいた統計的生命の価値の推定」((1994)山本秀一・岡敏弘)である。 山本.他(1994)は、飲料水の発がんリスクを削減することに対する支払意思額に基づいて、統計的生命の価値を推定した。水道水に含まれるトリハロメタン(身体に有害な物質)を取り除くろ過機に対して購入意思があるかどうかを京都市左京区から無作為に選んだ一般家庭に対し、アンケート調査を行った。アンケート結果の分析には、CVM(仮想市場法)と二項選択法を用いた。手順としては、最初の付値を1,000〜50,000円の間に10段階設定し、それを回答者にランダムに提示する。イエスと答えたら1ステップ高い付値を提示し、ノーと答えるまで付値を上げていく。そして、そのノーと答えた付値から1ステップ低い付値を最終付値とする。そこから得られたWTPの平均値または中央値を削減リスク及び一世帯当たり人員で割れば、統計的生命の価値を求めることができる。分析結果は、最終付値付近の平均値は26,900で、そこから得られる統計的生命の価値が22.4億円、最終付値付近の中央値が20,000で、そこから得られる統計的生命の価値が16.7億円であった。よって、CVMによって測ることができる統計的生命の価値は、約20億円であることが分かった。本研究では、CVMの分析手法を利用して水道水が飲めることの価値を測った。 石本.他(2012)は、ミネラルウォーターや浄水器の普及により、水道水の評価が相対的に低下していることを受けて、水道水に対する評価に影響する要因を調査した。水道水の飲用水としての満足度に対して「おいしさ」が最も影学生懸賞論文集第38号4、先行研究

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