松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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51道水の質に関して誤解をしているので、その誤解の前提で、さらに質を下げると言われると嫌がる(WTPを高く示す)のではないか。また、水道水を飲む人は(著者たちが予想するように)そもそもWTPを高く示すので、それが「水道水を飲む頻度」がWTPに影響しなかった理由の1つかと思われる。そのため、今回の仮説を「水道水を飲む頻度」だけで調べることには少し強引な印象を受ける。著者たちは、水道水に対する利用者の認識についてより深く検証すべきだろう。日本人はそもそも諸外国に比べ、衛生環境の良い状態に慣れていそうなので、その点に着目した検証を行う必要があるだろう(本文の課題の1つ目の満足度がそれに近いのかもしれない)。・ WTPを聞く際、水道代の値下げ(もしくは値上がり抑制)を条件に加える  →  アンケートでWTPを聞く際、水道水を飲まない人は、水道水の質を下げても特にいいこと(水道代が下がるなど)はないので、質を下げられることをそもそも受け入れるだろうか。著者たちは、本文の中で「水道代の値上がり」や、「水道水の質を下げて水道代を値下げ」という言葉を使っているにも関わらず、WTPを聞く際には、そのような条件は含んでいない。つまり、そもそも飲まない人の中には、前述のような理由で、質を下げるのを嫌がる人がいると考えられるため、メリットもないのに、デメリットだけを受け入れようとはしないのではないか。 3.論証水準 説明変数への値の割り振りが不適切だと思われた。例えば「住まい」に関しては自宅=1、一人暮らし=2、その他(寮暮らしなど)=3と値が設定されている。しかし「住まい」への回答結果の間に何らかの順序が想定されているわけではないため、各変数の影響を正確に検討するには、変数の設定をダミー変数とするべきであったと思われる。 性別についても同様の指摘ができる。 また、アンケート調査の質問の設計にも問題があったと思われる。特に水道水は飲める必要があるのか

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