松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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81商品に注目し、ネット店舗と実店舗のどちらで商品を購入したら良いかを明らかにすることを目的としている。近年ネットショッピングの利用が増加しており、その結果、購入した商品が、自身が希望したものとは異なる、いわゆる購入の「失敗」に対する不安が顕在化している(先行研究より)。また、ネットショッピング増加による配送業に対する超過需要が発生していることも課題として指摘している。 これら、オンラインと実店舗での購入、無駄の削減、物流システムへのまなざしと、現代社会の側面を把握しようとしている点で、独自性や妥当性のある論考と評価できる。コロナでますますネットショッピング利用の増加が予想される現代において、このような課題の解決に着目した本研究には一定の独自性があると考える。 2.論証内容 本研究の目的は、第3章までで述べられているように「実店舗でアパレル商品を購入する方が、無駄なものを購入することもなく、配送需要を抑制できる」というものである。4章の回帰分析の結果を見る限り、ネット店舗の利用が増えれば増えるほど、失敗も少なくなるという結果(表2)のため、無駄なものの購入は発生するが、それは経験により少なくすることができると読み取れる。これは、実店舗での購入よりもネット店舗での購入を(少なくとも長期的には)促進する結果であり、これにより著者たちの仮説は否定されたと結論づけている。 実店舗での購入がより望ましいことを論証するためには、オンラインでの購入だけではなく、実店舗での購入経験や無駄になったアパレルの有無も質問し、オンラインと実店舗購入との比較をする必要がある。従って、74ページ上から8行目「以上の結果から、」で始まる一文は、実店舗での実証データがない以上、論理的には語れない内容である。配送需要の抑制についても何ら言及がない。 著者たちの問題設定と検証はシンプルで分かりやすいが、その反面、検証できていないことが多いのではないかと考える。例えば、実店舗で買い物をすると、個々人で移動するため、移動による金銭的な費用や、環境負荷がかかる。一般的に配送業は、個々人よりも効率的に配送するため、社ネット店舗と実店舗でのアパレル商品の購入 どちらがお得なのか?

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