松山大学(学生懸賞論文集)第38号
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1   若い世代の結婚、子どもの数に関する希望が叶うとした場合に想定される出生率である。2   全国の自治体688市役所の公式ホームページを参考に、または直接問い合わせて集めたデータをもと2 現在、日本は少子化による人口減少という大きな課題を抱えている。内閣府(2020)によると15歳未満の人口は1990年から2000年の10年間で約2割も減少した。合計特殊出生率については、2005年には最低の1.26を記録しており、2019年時点で1.36と少し持ち直したものの依然低い数値で推移している。また、2019年は出生数が初めて90万人を割ったことでも話題となり、少子化の深刻さが浮き彫りになった。日本の総人口については、2008年に減少に転じて以降、その減少スピードが加速度的に進み、2050年代には1億人を割ると予想されている。また、年少人口においても2050年代には1,000万人を割り、2060年代で全体の10%程になると推計されている。このまま人口減少を止めることができなければ、労働人口の減少や市場規模の縮小、経済成長率の低迷、現役世代の負担増加、行政サービスの水準低下など社会生活に多大な影響を及ぼすことになる。一刻も早く有効な解決策を実行する必要がある。国は、この問題に対して「希望出生率1.81」という目標を掲げ、若い世代が将来に希望を持って仕事と育児ができるような環境の整備に努めている。具体的には結婚、妊娠・出産、育児を中心に、不妊治療の支援や待機児童の解消への取組がある。 国がこれらの対策を打ち出すなか、地方でも国とは違った独自の対策を打ち出している。それが「子ども医療費助成制度」である。医療費助成制度とは、保険診療による入院・通院医療費の自己負担分の一部、または全額を自治体が補助する制度である(全額を助成する制度を「医療費無償化」と呼ぶ)。総務省統計局家計調査(2019)によると、一年間に保険医療サービスに使う金額は一世帯当たり約94,000円とあり、医療費助成制度によってこのうち子どもに使う金額が節約でき、子育てによる負担の軽減につながると考えられる。医療費助成制度は、まず0歳の乳幼児を対象に1970年代前半から実施され、その後も徐々に対象年齢が拡大され、現在では高校生まで助成している自治体もある。図12は中学校卒業までを対象として医療費無償化(所得制限あり)を実施し出典)内閣府(2016)、「平成28年少子化社会対策白書」に著者らが作成した。学生懸賞論文集第38号第1章 はじめに

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