松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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バイオマス資源の利活用がもたらす循環型社会の在り方-住民協力の重要性-3用促進に力を入れて取り組んでいる。しかし、ごみの焼却率をみるとあまり変化がないのが現状である(環境省, 2020)。家庭系食品廃棄物は水分を多く含んでいるため、可燃ごみとして焼却することは非効率である。このような問題に対して、可燃ごみとして焼却せずに家庭系食品廃棄物をバイオマス資源として活用することで、可燃ごみ処理負担金の削減、資源の再活用につなげることができる。 このように、バイオマス資源の利活用がもたらす効果が注目され、バイオマス資源の利活用は拡がりをみせている一方で、課題も抱えている。 様々な廃棄物の中で特に家庭系食品廃棄物の利用率が低いことをうけて、2016年に政府は「バイオマス活用推進基本計画」を発表し、利用率を高める方針を打ち出した。しかし、それ以降も利用率は以前とさほどかわらず約7%にとどまっており(環境省HP)、十分な利活用が行われているとは言えない状況にある。 そこで本論文では、独自のアンケート調査の結果をもとに、家庭系食品廃棄物の利活用を促進するための要因を検討し、政策提案を行う。これまでの家庭系食品廃棄物の研究では、住民協力の重要性について言及しているものが見られるが(五十嵐・北田, 2008;竹野・山口, 2006)、住民の協力を促進するための要因については十分に検討がされていない。そこで、本論文では、住民の協力に最も強く影響を与える要因を、統計分析を行って明らかにする。この統計的な分析結果に加えて、バイオマス計画を発表している自治体(愛媛県大洲市)へのインタビュー調査の結果もふまえて、家庭系食品廃棄物を上手く循環させるための新たな政策を提案する。 本論文の構成は以下の通りである。第2章で、家庭系食品廃棄物の現状と課題を把握したうえで、第3章では、先行研究をふまえて本論文の課題を設定する。第4章では、本論文の課題である住民協力の要因を明らかにするための調査方法を提示する。第5章では、定量的な分析として、アンケート調査の結果をもとに重回帰分析を行う。また、定性的な分析として、大洲市役所へのインタビュー調査について検討する。第6章では、これらの結果をふまえた新たな政策を提案する。そして最後に、各章の内容をふまえた結論を提示する。

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