松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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週5日40時間勤務はもう古い?副業時代の働き方99 ⑴生産性と賃金の均衡 在宅勤務の拡大は、集計的な賃金上昇率を低くする可能性が高い。在宅勤務を定着させるためには、個々の労働者の在宅勤務の生産性をいかに計測し、どう賃金に反映させるかが重要な課題となる。 ⑵働き方への補償賃金 希望して在宅勤務を行う労働者の相対賃金は、生産性が同じだとするならば、オフィス労働者に比べて10%程度低くなる可能性がある。これは、相対賃金であるため、「オフィス勤務者の賃金上昇・在宅勤務者の賃金低下」の組み合わせで相対賃金の調整が行われるならば、集計的な賃金上昇には影響がない可能性もある。しかし、在宅勤務というアメニティを志向する労働者の構成比が高くなれば、集計的な平均賃金を押し下げる要因として働く可能性もある。第2節 先行研究② 「日本の長時間労働―国際比較と研究課題(小倉、2008)」(4-15頁)では労働時間の国際比較、長時間労働の研究のために現状、課題について論じている。 まず国際比較だが、雇用者1人あたり年間総労働時間の推移を見ると、日本はOECD加盟国の中でも長時間労働の代表国である。(5-6頁) また、各国の年次有給休暇も日本は欧州諸国に比べてかなり少ないことが述べられている。日本では6ヶ月間継続勤務、出勤率8割以上という決まりがある。しかし、欧州にはこのような決まりがないことが多く、勤務年数などに関係なく、通常の労働者は年間20~25日の休暇を持つ。また、欧州ではこの日数を上回る日数休暇をとっている国や、長期休暇が慣習となっている国もある。これは、戦後の経済復興過程で労働者の労働条件を、賃上げだけでなく、休日や休暇の拡大に向けて動いた欧州の労働組合の大きな成果であると言えると述べている。(7-10頁) 次に長時間労働における生産性や作業効率の問題について、以下のようにまとめられている。 1990年、政府統計を使用して労働時間と作業効率の関係を推計した早見(1995)によれば、日本の労働時間は時間当たり、生産性を最大にする労働時間

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