松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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学生懸賞論文集第39号100よりも22%ほど長いという結果が得られている。また早見の手法を用いて2002年の政府統計を使用した小倉・坂口(2004)も、産業計で10%ほど、現実の労働時間が長いという結果を示している。つまり、現在の日本の労働時間は、労働生産性を最大にする長さ以上の長さになっており、したがって、長時間労働として個々の労働者に様々な悪影響を及ぼしていると考えられる。(12頁) 続けて小倉(2008)は高度経済成長以降の日本は生産性上昇の成果配分が賃上げに多く向かい、時短にあまり向かなかったことが長時間労働の原因であることに説得力があるとしている。(12頁) 最後に日本の長時間労働に関して、他にもたくさんの課題があるが、小倉(2008)が特に重要だと考える問題についてまとめる。 ⑴業務量の多さ、成果主義など 業務量が多いというのは、通常の労働時間で終わらない、長時間労働を前提とした業務量になっているということではないかと筆者は述べており、また成果主義の導入後、労働時間が相対的にあまり見られなくなっている。成果主義が進めば進むほど、会社は従業員に対して、成果の増大を求めるようになり、労働時間が労働者のパフォーマンスの指標として見られなくなるのである。(13-14頁) ⑵管理監督者 筆者の調査では、裁量労働制の適用労働者や管理職のほうがそうでない人たちより労働時間が長いことが分かっている。(14頁) ⑶利便性を求める消費行動 日本は利便性を求め、コンビニ(24時間営業)やデパート(休日営業)などを行っているが、大陸ヨーロッパなどでは商店営業時間規制を厳しく行っている。消費者にとっては便利であるが、それと同時にそれを支えるのは労働者であることを認識することが必要なのではないかと述べられている。(15頁) 小倉(2008)の論文によると、日本は世界的にみても長期労働の代表的な国であることがわかる。また、各国との仕事に関する歴史や文化、価値観を比べてみても、仕事に対する比重が大きい国であることがわかる。

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