松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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バイオマス資源の利活用がもたらす循環型社会の在り方-住民協力の重要性-7している(五十嵐, 2008)。竹野・山口の研究では、生ごみ分別収集リサイクルは、住民の参加が最も事業の有効性を左右する重要な要素と位置付けている(竹野, 2006)。 このように、先行研究では、事業性と住民協力の重要性について検討がなされてきた。両者のうち、事業性については、森山らの研究で、解決困難なものという指摘がある一方で住民の協力行動については解決しうる問題とされている(森山, 2006)。 この指摘をうけて、本論文では、後者の住民の協力行動に着目する。住民の協力行動については前述の研究があるが、家庭系食品廃棄物の利活用の循環における協力行動とは具体的にどのようなものなのか、住民協力を分類して検討している研究はほとんど存在していない。 こうした視角からの唯一の研究としては、近藤・堀・永野の研究がある。この研究では、家庭系食品廃棄物の地域内循環における住民協力を、「分別協力」・「利用協力」・「購買協力」の3つの局面に分け、検討を行っている(近藤, 2012)。この研究は、それまで抽象的に検討されてきた住民協力を3つの局面として具体的に定義しているという点で先駆的なものではあるが、この研究においても住民の視点のみを重視したものであること、また福岡県大木町という一地域のみを対象としたものであることなど、住民協力を高める要因の分析としては十分とはいえない点も見受けられる。 住民協力を高めるための要因を明らかにすることで、地域内における新たな産業の創出や、雇用の創出、持続可能なまちの形成など循環による多くのメリットを地域が受けることができる。また、本論文で対象とする家庭系食品廃棄物は、地域内の家庭から排出されるものであるため、住民協力を推進する要因を明らかにすることは、全国の様々な地域で循環を生み出し、その結果、地域内循環がもたらす様々なメリットを地域が享受することにつながる点で重要だといえる。 これまで、家庭系食品廃棄物の利活用に関する先行研究を整理したが、その結果として、家庭系食品廃棄物の利活用については、地域内に家庭系食品廃棄物の循環をもたらすための住民協力を推進させる要因に関する分析が必要であるといえる。そこで、本論文では、前節でも触れた近藤・堀・永野の研究(近

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