松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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バイオマス資源の利活用がもたらす循環型社会の在り方-住民協力の重要性-25B:論文の内容 1.テーマの設定 本研究は、循環型社会の形成を促す取り組みとして近年注目を集めているバイオマス資源の利活用について、家庭系食品廃棄物の利用率が低いことを問題提起し、住民協力の重要性に焦点をあてて分析したものである。本論文は、このテーマでの先行研究では、十分な検討がされていない「住民の協力を促進する要因」を扱っており、独自性のある研究と言える。 2.論証内容 家庭系食品廃棄物の利活用において住民協力を促進させる要因を分析するため、バイオマス事業の当事者である自治体と住民の両者に対してアンケート調査を実施し、分析を行っている。調査対象は、バイオマス計画を発表している390の自治体全てと、愛媛県大洲市および内子町の住民である。分析の結果、住民協力を促進させるためには、自治体側では「利用広報」が、住民側では「利用方法」が重要な要因であることを明らかにしている。さらに、分析結果から考察し、大洲市役所に対して行ったインタビュー調査も踏まえて政策提案へとつなげており、大変意欲的な方法で論証していて、かつ、論理も一貫していると考える。 3.論証水準 重回帰分析を用いて論証しており、ステップワイズ法で変数選択を行い、t値やp値により回帰係数の検定結果も示されている。格調の高い論文となるように意欲を感じさせる論証を行っていると評価できるが、アンケートの質問項目は述べられているものの、質問内容の詳細が不明であり、適切なアンケートの質問設計のもとで重回帰分析が行われていることについて、もう少し説明が欲しかった。C:総括 本研究は、以下の理由により、学部生の論文としては高水準の論文であると考える。第一に、データ収集に関して、実際に足を運ぶなどをして非常に努力していることが窺えることである。第二に、独創的な指標を考案して、実証分析を試みている点である。第三に、分析結果から考察するにとどまら

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