松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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サテライトオフィスの活用がもたらす地域の可能性-参入数増加の重要性-29地の自治体における関心が高まり、サテライトオフィスの開設数は、2013年は114か所であったのに対し、2019年には654か所となっている4。 このように、サテライトオフィスは全国的な拡がりをみせている一方で、データによれば、毎年平均21か所のサテライトオフィスが閉鎖・撤退に追い込まれているのが現状である5。その背景には、各自治体に設置されているサテライトオフィスのうち、全体の約半分にあたる46%のサテライトオフィスにおいて、参入している企業が1社と、未だ十分に普及しているとは言えない状況にあることがあげられる6。これらがサテライトオフィスの維持自体に影響を与えており、サテライトオフィスを普及させるための新たな政策が必要とされている。 そこで本論文では、独自のアンケート調査の結果をもとに、サテライトオフィスを普及させるための要因を検討し、政策提案をおこなう。これまでのサテライトオフィスに関する先行研究は、サテライトオフィスの紹介や取り組みについて言及しているものが多く7、参入数の増加に関わる要因については十分に検討されていない。これらを踏まえて、本論文では、参入数を増加させるための要因を、統計的な分析をおこない、明らかにする。この統計的な分析結果に加えて、サテライトオフィス事業を実施している自治体(徳島県美波町)と参入企業(株式会社あわえ:徳島県美波町)へのインタビュー調査の結果も踏まえて、サテライトオフィスへの参入数を増加させるための政策を提案する。  本論文の構成は以下のとおりである。まず、サテライトオフィスの現状と課題点を把握したうえで、先行研究の調査を踏まえて本論文の課題を設定する。次に、定量的な分析として、アンケート調査の結果をもとに重回帰分析をおこなう。また、定性的な分析として、美波町町役場と株式会社あわえにオンライ4  総務省(2020a)「地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設数」(報道資料:地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査結果)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000713091.pdf, 閲覧日2021年10月4日)5  総務省(2020a)同上6  総務省(2020b)「サテライトオフィス開設状況(令和元年度末時点)」(報道資料:地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査結果)(https://www.soumu.go.jp/main_content/000713168.pdf, 閲覧日2021年10月4日)7  代表的なものとして、荒木・井上(2018)や高橋・武田(2020)など。

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