松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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サテライトオフィスの活用がもたらす地域の可能性-参入数増加の重要性-35 本章では、サテライトオフィスに関する先行研究について整理する。サテライトオフィスに関する書籍や論文の調査をおこなった結果、サテライトオフィスに関する先行研究は以下の2つに大別できる。 第1は、サテライトオフィスの紹介・取り組みに関する研究である。代表的なものとしては、荒木・井上(2018)と高橋・武田(2020)がある。荒木・井上(2018)は、「自治体とサテライトオフィス企業が連携して地域の課題解決に向けた取り組みを企画、実行している」と言及している(荒木・井上2018,53頁)。また、高橋・武田(2020)は、「サテライトオフィスを活用した地域活性化の取り組みが、現在のまちづくりにおいて一つのトレンドである」としている(高橋・武田2020, 1頁)。 第2は、サテライトオフィスの設置が地域にもたらす効果に関する研究である。代表的なものとしては、谷垣・加藤(2017)、遠藤(2019)、小田・遠藤・藤田(2019)がある。谷垣・加藤(2017)は、「地域間競争輸入モデルを用いて、神山町におけるサテライトオフィス事業が5800万円程度の経済波及効果をもたらした」と推定している(谷垣・加藤2017, 462頁)。遠藤(2019)は、「徳島県美波町ではサテライトオフィス進出により、移住を伴わない関係者も含めれば50~60名規模のコミュニティが形成された」としている(遠藤 2019,1頁)。小田・遠藤・藤田(2019)は、「サテライトオフィス進出に伴って大都市圏からの「人口移動」を引き起こし、さらに流入人口が「地域づくり」にとって重要な参画者となりつつある」と言及している(小田・遠藤・藤田2019, 29頁)。 このように、サテライトオフィスに関する先行研究は2つに大別されるが、サテライトオフィスが地域にもたらすプラスの効果が明らかにされていることを踏まえると、サテライトオフィスを普及させることが重要であると考えられる。しかし、先行研究においては、企業の参入数を増加させるための要因として、断片的にいくつか項目があげられているものの、どの要因がどの程度参入数の増加に影響があるのか、明らかになっていない。このような状況にある背景には、参入数を増加させるための定量的な分析がおこなわれていないことが3.先行研究に関する調査及び本論文の課題設定

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