松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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サテライトオフィスの活用がもたらす地域の可能性-参入数増加の重要性-51 2.論証内容 回帰分析(定量的な分析)をした後、自治体と企業の方にフィードバックを行い、定量分析の結果の妥当性を確認している点を大いに評価したい。 しかし、本論文の分析には気になる点もある。「将来性」に関して、自治体側も企業側も図表4-4、図表4-5から漏れてしまったのはどのように解釈すればよいのだろうか。もし「今後活動拠点を増やしたい」と思っていない企業が多いのであれば、サテライトオフィスを増やしても企業の参入は見込めないではないか。 また、「地域貢献」に関しても、自治体側も企業側も図表4-4、図表4-5から漏れてしまったのはなぜだろうか。先行研究では経済波及効果やコミュニティの形成、地域づくりといった地域経済・社会への影響が紹介されている。この点に関して先行研究の内容との対比で言及できれば、本論文の独自性がよりはっきりとしたものになったのではないだろうか。 以上の「将来性」と「地域貢献」に関する指摘はあくまでも、漏れてしまったのはなぜか説明すべきではないか、という意味で指摘したもので、「漏れるはずがない」あるいは「漏れるのはおかしい」と言っているわけではないことに注意いただきたい。 3.論証水準 4 分析⑴定量分析(36ページ)のアンケート項目の設定につき、先行研究やインタビューの内容を踏まえて取り上げているのは評価できるが、唐突感がある。なぜそれらを取り上げたのか、もう少し説明があってもよいのではないだろうか。C:総括 本論文は先行研究が手薄なサテライトオフィスへの参入要因の増加に関して、企業や自治体にインタビュー調査を行い、定量分析に取り組んでいる意欲的な論文である。豊富な文献レビューをもとに参入を増やすであろう要因を考え、それらが妥当であるか回帰分析を行って確かめている点は学術研究としての一定の水準をクリアしていると考えられる。

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