松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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学生懸賞論文集第39号54 現代日本では、人口減少や少子高齢化について様々な分野で話題になることが多い。とりわけ農山村では、上記の問題に加え過疎化などの進行が顕著であり、担い手不足などによる耕作放棄地の増加や農林業の衰退も深刻化している。さらに、農山村におけるこのような社会問題の進行により、農林業面だけではなく、商店やガソリンスタンドの撤退、公共交通機関や公共サービスの縮小などにより生活自体に不安を抱えている地域も多い。 一方、2010年頃からの都市から地方へ移住して農林水産漁業に関わる田園回帰の動きが高まっている。また、コロナ禍による二地域居住やワーケーション等の働き方の多様化に伴う新たなニーズも生まれている。この状況を受けた農林水産省の取組みの方向性としては、農山村で働き生活していくための「受け皿」としての機能、農業とそれ以外の様々な事業を兼営する農村地域づくり事業体(農村RMO)の育成、また、ワーケーション等の新たなニーズに対応した農泊の推進等による地域の魅力の向上と関係人口の創出と増大を掲げている。農村RMOについての詳細は後述するが、近年、地域住民が主体となり、農林漁業等の産業振興や生活支援等の様々な活動を行う組織を立ち上げ、地域活性化を図りつつ、地域コミュニティの維持に取組む事例が全国に増えている。こうした取組みを行う体制は「地域運営組織」(RMO:Region Management Organization)と呼ばれている。農林水産省は関係府省と連携しながら、農村における地域運営組織の形成等を通じた地域を持続的に支える体制づくりを進めている。また、田園回帰の流れに、新しいニーズの高まりや生活様式の多様化の動きが加わったことで、持続可能な地域づくりへの関心と必要性が高まっている。 本稿では、農山村地域のヒト・モノ・カネ・情報の流動性を高めることが、地域の持続可能性と再生につながると考える。これはいわば、グローバリゼーションの流動性を地域内で実現しつつ、それを民主的に運営していく「協働」であり、この動きを生み出す機能体として“地域再生プラットフォーム”という仕組みを提案する。具体的な制度設計は、愛媛県大洲市豊茂地区を事例として検討していく。はじめに

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