松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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地域再生プラットフォーム-制度設計と政策立案-55 本稿の構成は以下の通りである。まずⅠ章では、農村と地域再生を巡る現状について、2000年から2010年代の人口減少下における農村の変化、現在にいたるまでの地域再生に関する先行研究のレヴューを行う。Ⅱ章では、本研究で提案する地域再生プラットフォームの構造について機能や方向性の明示と、政策としての農村RMOとの関連性に言及する。Ⅲ章では、地域再生プラットフォームの制度設計を行うため、事例として取り上げる愛媛県大洲市豊茂地区の現状の整理と、2020年に行った調査の分析から住民のニーズを明らかにした上で、シビックテックの事例を基に主に3つの機能からなるアプリケーションを提案し豊茂地区の課題解決を目指す。 Ⅳ章では、以上の提起を踏まえ、若干の総括と展望を述べる。 本章では、現代日本の大きな課題である少子高齢化や人口減少が起こるまでの流れと、その流れの中での地方・農村の変化と関連政策を整理する。また、地域再生の手法について検証した先行研究をレヴューする。1.人口減少下の農村 -2000~2010年代の農村- 農村と地域再生を巡る現状を見ていくために、前提として日本全体の人口問題について整理しておく。人口動態は、出生数と死亡数の差による自然増減、転入数と転出数の差による社会増減があり、日本全国をみると長期にわたり自然増(出生数>死亡数)が続き、総人口も増加していた。しかし、2005年に自然減(死亡数>出生数)に転じ、総人口も戦後初の減少となった。2006年には自然増に戻ったものの、2007年には再度自然減になり、以降は自然減が続いている。 ここでは特に出生数について着目する。日本の出生数は、戦後の第1次ベビーブーム(1947~49年)の爆発的な人口増を経て、その時期に生まれた世代による第2次ベビーブーム(1971~74年)以降、減少傾向にある。2016年以降は100万人を下回って推移しており、2019年も過去最低の出生数となっていⅠ.農村と地域再生を巡る現状

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