松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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地域再生プラットフォーム-制度設計と政策立案-61 この章では、本稿で地域再生のためのシステムとして提案する、“地域プラットフォーム”の概念的な説明と、農水省の推進する農村RMOとの関係性に言及する。1.プラットフォーム資本主義への対抗 資本主義の現在地点は、巨大プラットフォーム企業によって市場を独占された“プラットフォーム資本主義”といっても過言ではない。具体的には、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)らに代表されるプラットフォーマーによる支配である。あらゆるモノを商品化し、市場を拡張してきた資本主義であるが、その市場は、1990年代からはグローバルな領域に、21世紀に入ってからはインターネット空間にまで及ぶまでになっている。先に挙げたGAFAは、インターネット空間を拠点として、買い手と売り手を結びつけるプラットフォームを構築しつつ、ユーザーを囲い込むことで、独占的な地位を確立している2。こうしたプラットフォーマーは、自社のプラットフォームを無料で利用させる一方で、ユーザーの個人情報を吸い上げ、売り手には不当に高い手数料をかけ、かつ現場ではギグ・エコノミーの形態を含めた非正規・低賃金労働者を働かせており、利潤を得ている。すなわち、表面的には、広く市場における買い手と売り手のマッチングを担いながらも、その内実は、グローバルに展開された独占と収奪である。当然、地域経済もその影響下にある。 プラットフォーム資本主義への対抗軸が模索されるなかで注目すべきは、プラットフォーム協同組合主義である。この概念は、最新のICT技術を駆使しながらも、労働者による協働労働と民主的なガバナンスに基づいて事業を運営していくというもので、Trebor Scholzが提唱し、新しい働き方や暮らし方Ⅱ.「地域再生プラットフォーム」の構造2  インターネットにおけるプラットフォームとは,マカフィーほか(2018)によれば「無料、完全、瞬時の優位性を生かしたオンライン環境であり、アクセス、複製、配布の限界費用がほとんどゼロである」(マカフィーほか2018, p208)空間のことをいう。ただし、これは空間としての位置づけである。本来的な市場としての意義は、パーカーほか(2018)がプラットフォームの全体的な目的として挙げている「ユーザー間で完璧なマッチングを行い、製品やサービス、社会的通貨を交換しやすくして全参加者にとって価値を創造しうるようにする」(パーカーほか2018, p9)というところに端的に表れている。

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