松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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学生懸賞論文集第39号62として提示している、とりわけショルツは、既に存在するシェアリング・エコノミーやオンデマンドエコノミー(UberやAirbnbなど)の技術を模倣しつつ民主的な所有に改め、協同組合方式による運営によって労働者による協働労働と連帯を実現し、すべての人に利益をもたらすものとして、説明している(Scholz 2016:14)。 日本において、プラットフォーム協同組合主義そのものは定着していない。しかし、先にショルツによる説明にあるような、既に存在する技術やモデルを駆使しつつ、市民の共同によって社会問題を解決しようとする取組みは、日本では、シビックテックとして登場している。これは、シビックテックといい、アメリカにおける市民によるウェブ活用という潮流から端を発したもので、「市民主体で自らの望む社会を創りあげるための活動とそのためのテクノロジーのこと」(稲継編,2018,pii)と定義されている。プラットフォーム協同組合主義と比べると、その主体が労働者か市民かという位置づけの違いがあるものの、プラットフォーマーの持つ技術を民主的な運用に改めて活用することは共通しているといえるだろう。この仕組みを、地域再生に適用することが、本稿の課題である。すなわち、次節以降で具体的に展開する「地域再生プラットフォーム」とは、地域再生に特化した、新しいコミュニティかつ事業体であり、独占と収奪をグローバルに展開するプラットフォーマーの技術を用いた、ボトムアップ型のプラットフォームである。2.「地域再生プラットフォーム」とは何か 地域再生プラットフォームは、地域住民を中心にその地域には縁のなかった外部からの移住者や関係人口を含む多様な人材が関わって、自治会やその他の地域コミュニティの議論も包む地域再生に取り組む一つの連帯経済の形である。 関係人口の増加による地域内外のヒト・モノ・カネ・情報の流動性を高めることは、地域再生プラットフォームに以下の3つの機能をもたらすと考えられる。1つ目はインキュベーター機能である。この機能により、地域での生活や問題・課題の解決に取り組む中での生業づくりにつながり、地域運営・再生の専門家としての育成もできる。2つ目はアジール機能である。アジールとは、

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