松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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地域再生プラットフォーム-制度設計と政策立案-63歴史的・社会的な概念で、「避難所」「無縁所」などとも呼ばれる場所のことを意味する。都市での労働や生活への疲弊など何らかの要因で離脱しても気兼ねなく流入できる、多様な背景や状況の人を受容する逃避所としての機能である。3つ目に、スピンオフ機能である。スピンオフ機能とは、地域外から流入した人が再度地域外へ流出する動きのことである。インキュベーター機能により知識や情報、人間関係などを地域で身に付けた人が都市で力を活かそうと流出することもありうる。しかし、関係人口としての地域とのつながりは切れず、再度地域に戻ったり、新たに地域に人を呼び込むきっかけになる可能性も考えられる(図3)。 地域再生プラットフォームは、先述した通り、自治会やその他の地域コミュニティの議論も包む地域再生に取り組む。この最大の目的は、やはり人口減少や高齢化の中で地域の持続可能性を見出し、高めることにある。 そこで、プラットフォームとしての具体的な取組みの方向性を、農山村地域の自然を含む潜在的資源を生かした「FEC自給」3を目指し、同時に地域の問題解決に努めることとする。「FEC自給」とは、食糧(Foods)、エネルギー(Energy)、介護を含む人間関係であるケア(Care)を自給する考えのことである。内橋(2006)は、「FEC自給」とは、企業優位のマネー資本主義から地球に生きる人間の生存条件を優位に考え生活基盤を強固にし、持続可能な社会に向けた考えであるとしている。この考えは、農山村地域でも食糧の地産地消、豊かな自然を用いたマイクロ発電、関係人口を含む地域コミュニティによる共助など、持続可能性を見出すための重要な視点といえる。このような方向性の上で、プラットフォーム協同組合主義・シビックテックの概念を用いて、ボトムアップ型のプラットフォームを築くのである。具体的にどのような事業を行うかの制度設計はⅢ章で行う。 また、ここで注記しておきたいのは、プラットフォームの形成には、地域住民が地域の問題・課題に目を向け、地域の持続可能性を高めるために主体的に取組みを行う姿勢が欠かせないということである。例えば、関係人口はあくま3  「FEC自給」は、内橋克人氏によって初めて提唱された。愛媛大学社会共創学部研究チーム(2018)は、FEC自給圏の発展としてFECに企業誘致に依存しない雇用(Work)を加えた「FECW自給圏構想」を提案している。

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