松山大学(学生懸賞論文集)第39号
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学生懸賞論文集第39号2 本論文は、近年課題とされている循環型社会の形成の促進を促す取り組みとして注目を集めているバイオマス資源の利活用について、住民協力の重要性に焦点をあてて検討するものである。 バイオマス資源とは、化石燃料を除いた食品廃棄物や家畜ふん尿、木材などの再生可能な有機性の資源のことである(九州農政局HP)。バイオマス資源利活用の具体例として、調理の過程で捨てられる野菜屑や魚の骨などは分別収集され、堆肥化施設で堆肥に変換される。農家がその堆肥を使って野菜を生産し、販売する。消費者がその野菜を購入し、野菜屑がごみとして排出され、再び分別されることでバイオマス資源が利活用され、循環が生まれる。日本においては、2002年に、政府が「バイオマス・ニッポン総合戦略」を閣議決定し、バイオマス事業の支援を進める方針を打ち出した。具体的には、2002年から「バイオマスタウン構想」、2011年からは「市町村バイオマス活用促進計画」、2013年からは「バイオマス産業都市構想」を発表し、現在では、延べ390の市町村が計画に参加しており(農林水産省, 2021b)、日本においては、バイオマス資源の利活用が拡大しつつあるといえる。 では、なぜ日本においてバイオマス資源の利活用が注目されているのであろうか。それは、バイオマス資源を利活用することで、日本が抱える様々な課題を解決すると期待されているからである。以下、具体例をあげて説明をしていく。 第1は、循環型社会システムへの移行促進である。1950年代半ば以降の高度経済成長期の日本においては、「大量生産・大量消費」の社会経済システムが定着し、それまでにない快適で便利な生活が到来した。しかし、同時に、大量消費は大量廃棄を生み出すことになり、自然環境に大きな負荷を与えることとなった。その結果、環境に様々な悪影響を及ぼす事態を引き起こした。こうした問題に対して、廃棄されていた資源をバイオマス資源として利活用することで、持続可能な社会を形成することにつながるとされている(環境省, 2004)。 第2は、ごみの焼却率の減少である。近年、日本ではごみの減量化・再生利1.はじめに

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