主観的なリスクの認識の変化を反映する形で地価が相対的に減価することが確認され、リスク認識のバイアスが影響していることが確認された。また、山形ら(2011)では、平成20年に販売開始されたマンションを対象に、災害リスク指標の不動産価格への影響について、東京23区を対象に分析している。浸水リスクや火災危険度、建物倒壊危険度などを災害リスクとし、また、環境性能に関する関数変数として、太陽光発電、屋上緑化などの有無を用いている。災害リスク以外には、住戸毎の変数として平均面積、階高、公共機関の距離などが用いられた。結果として、平均面積や階高、公共機関などの変数は不動産価格に対して、有意に影響を与えていた。一方で、環境性能については、屋上緑化のみ影響を与えていた。また、予想に反して、建物倒壊危険度が高いと+、火災危険度が低いと-、浸水リスクが低いと-、高いと+といった結果が示された。 津波の危険度に関する評価として、東野ら(2015)では、南海トラフ地震による津波の潜在的な危険性を評価するために、大分県佐伯市においてヘドニック法に基づく地価の調査を行っている。彼らは、地価は佐伯駅、学校、公園へのアクセスの良さ、およびリスク要因の関数として分析を行った。分析結果としては、地価は佐伯駅からの距離が長くなるにつれて低下し、水災害に対するリスク要因については、標高・津波到達時間・浸水深は統計的には十分に有意ではなかったが、浸水深が地価に対して有意であった。 また、最近の研究として、宇野・谷口(2020)では、全国各地にみられる一般的な津波災害地名地点を対象に、空間情報解析によってその地形分類や地質・土壌区分の特性および相互関係を把握し、沿岸市区町村の災害地名による津波被災リスクの顕示性を明らかにした。彼らは、津波のみを示唆する災害地名ではなく、多くが洪水や土砂災害の可能性を示し、高い割合で津波被害地名が潜在的な津波浸水リスクを有する可能性が示唆されるという結果を明らかにした。 また、ほかの水害リスクの研究として、寺本ら(2008)は、大阪と東京を対象に、水災害リスクが地価に及ぼす影響の検証を通して、東京・大阪の両地域住民の水災害リスクに対する意識について分析している。結果として、東京地域では住民の水災害に対する危険回避的な行動がみられたが、大阪地域では住学生懸賞論文集第40号6
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