学生懸賞論文集 第40号
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民の立地行動に水災害リスクは織り込まれておらず、危険箇所を考慮しない土地利用がより進んでいる現状を明らかにした。この両地域の住民意識の相違は、地形の形状に基づく水災害リスクの認知度の差や、その他様々なメディアを介して提供される情報の浸透度合い等によると述べている。災害以外にも、環境や規制が地価に与える影響を検証した研究も多い。姜(2017)は、東京都特別区の2007年から2012年までの6年間の地価パネルデータを用いて、大気環境が地価に与える影響を検証している。結果として、NOX及びSPM、NMHCの年平均値は地価に負の影響を与え、その関係は汚染物質の空間分布にかかわらず、類似していることを明らかにしている。また、持家率の高い地域ほど大気環境に対するMWTPがより高くなることについても述べている。愛甲ら(2008)は、札幌市の住宅街の事例として、公園緑地の存在が地価公示価格に反映されているのかどうかをヘドニック価格法で明らかにした。結果として、公園緑地は、札幌市の住居専用地域において、地価を上昇させる要因であることが示され、具体的には最寄りの公園が大きいこと、周辺の緑地率が高いことが地価を上昇させる要因となっていることが明らかになった。谷下ら(2009)では、景観規制が戸建住宅価格に及ぼす影響を東京都世田谷区を対象に検証している。具体的には、東京都世田谷区における 検証において、被説明変数として、1995–2005年の戸建住宅価格データを用いて、①敷地条件を表す変数、②周辺環境に係る変数、③景観規制を表すダミー変数の3つの要素に回帰させて分析を行っている。結果として、景観規制だけでは戸建住宅の価格に及ぼす影響は大きくないが、長期的に細分化の防止など地区の物的な住環境の維持改善に寄与する場合は、住宅価格を相対的に引上げる可能性があることを示している。  このように、地価に影響を与える要因は様々であるが、第1章で述べたように、近年様々な災害が日本各地を襲っている現状が報告されており、特に水害についてはここ数年頻繁に起こっているのが現状である。前述のように、地震や津波のリスクが高い地域は、地価が低下する傾向があることが示されているが、地名が地価に与える影響を検証した研究は限られている。地名の一部は自然要因によって付けられているものがあるため、例えば「水」に関する地名がついていた場合は、その他の地域に比べると、水害が起こる可能性が元々高い災害を連想?~地名が地価に与える影響~7

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