学生懸賞論文集 第40号
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13 岡本翔平ほか(2017)「インセンティブ付き健康づくり事業参加者のうち,誰がプログラムを継続できないか:報奨獲得への動機と継続率に関する実証研究」『日本公衆衛生雑誌』(日本公衆衛生学会)、64巻8号、412ページ。14 上村一樹・駒村康平・久野譜也(2015)「健康ポイント制度のコンジョイント分析」慶應義塾大学3.2 本論文における課題の設定 前節では、健康ポイントに関する論文を整理した。それを踏まえて、本節では、本論文における課題を設定する。 本研究の課題を設定するうえで、事業の活性化に関する論文の中でも、上村一樹・駒村康平・久野譜也(2015)に着目する。上でも述べたように、上村一樹・駒村康平・久野譜也(2015)は、健康ポイント事業について、データを用いて詳細に分析した数少ない研究である。たしかに、この研究が示唆しているように、事業への参加の促進は、事業の間口を広げ、事業自体の活性化につながると考えられる。しかし、健康ポイント事業の本来の目的は、健康増進への効果を得ることであり、参加の促進が健康の増進につながるかについてはさらなる検討が必要である。健康ポイント事業と健康増進という効果を結び付けるためには、参加という「入口」からの検証だけではなく、効果といういわば「出口」からの検証が必要不可欠である。しかし、この効果の側面については、これまで十分に検討されていない。的動機よりも現金性を実感できるような報酬が継続確率を高めることが示唆されている。また、継続率を高めるためには、インセンティブ付与のみならず、もともとの身体活動状況等に応じて運動を継続できる工夫が必要であることが指摘されている13。上村一樹・駒村康平・久野譜也(2015)では、健康ポイント制度の参加者を増やすためにはどのような制度設計が効果的であるのかについて、仮想の健康ポイント事業を設定し、アンケート調査をとおして、参加者の増加につながる要因について分析をおこなっている。分析の結果、参加を促進する要因として、運動負荷と付与ポイントの関係・ポイント付与の多様性・努力や過程を評価する仕組み・自由度の高いポイントの使い道が指摘されている14。この研究は、データを用いて事業の活性化に向けた要因を詳細に分析した数少ない研究であり、意義のあるものであるといえる。経済研究所 応用経済学ワークショップ 報告論文、20-21ページ。健康ポイント事業がもたらす健幸まちづくりの可能性-成果につながる要因の分析-35

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