学生懸賞論文集 第40号
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5.3 定性分析 本節では、定性的な分析として、愛媛県松山市保健所健康づくり推進課の方にオンラインで実施したインタビュー調査と、健康ポイント事業の参加者の意見をもとに、考察をおこなう。 分析結果に対する考察をより深めるために、2021年10月1日に愛媛県松山市保健所健康づくり推進課にフィードバックをおこなった。同市役所職員に対して、自治体側については「住民同士のコミュニティ」が歩数に最も影響を与え明らかになった。これは、自治体側では「住民同士のコミュニティ」というメニューを、住民側では「広報」というメニューを用いた政策を実行することが最も住民の歩数、歩行意欲の増加につながるということを示している。 本節の定量分析により、自治体側は住民同士のコミュニティ、住民側では広報が歩数・歩行意欲に最も影響を与えるということが明らかになった。以下では、これらの分析の結果をもとに考察をおこなう。 すでに検討したように、本論文では、住民の歩数を増加させる要因として9つの項目を設定した。これらの中でも「住民同士のコミュニティ」(自治体側)と「広報」(住民側)が住民の歩数を増加させるために最も効果が高い項目であるという結果になった。なぜこのような結果になったのであろうか。 まず、自治体側について検討する。自治体側が「住民同士のコミュニティ」となった理由について考察するため、ウォーキングと交友活動の関係についての先行研究に着目した。先行研究では、グループ活動における交友活動や家族・友人との関係が、ウォーキングの継続的な実施に影響すると指摘されていた。このことから、住民の歩数を増加させる要因として、「住民同士のコミュニティ」が最も強い影響を与える結果になったと考えられる。 次に、住民側について検討する。住民側では、「広報」となった理由について考察するために、厚生労働省の策定した身体活動量を増加させるための対策に着目した。厚生労働省より、マスメディアや健診後の指導など多くの場において身体活動の有効性とその方法についての情報を伝えていくことの有効性が指摘されていた。このことから、住民の歩行意欲を増加させる要因として、「広報」が最も強い影響を与える結果になったと考えられる。学生懸賞論文集第40号46

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